切禿きりかむろ)” の例文
「関口屋の女房と娘とお由と三人連れで、氷川へ参詣に行って、その帰り路で出逢ったそうで……。蛇じゃあねえ、切禿きりかむろの女の子だそうですが……」
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
雪洞ぼんぼり真中まんなかを、蝶々のようにと抜けて、切禿きりかむろうさぎの顔した、わらわが、袖にせて捧げて来た。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひっそりと静まり返った人々の中から、急にけたたましい泣き声をあげて、さっき竹馬を持っていた童部わらべが一人、切禿きりかむろの髪を躍らせながら、倒れている鍛冶かじの傍へ、転がるように走り寄ったのは。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
それに就いてはいろいろの説がありまして、胴の青い、頭の黒い蛇、それが昔の子どもの切禿きりかむろに似ているのでかむろ蛇と云うのだと、見て来たように講釈する者もあります。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
階子はしごの上より、真先まっさきに、切禿きりかむろの女童、うつくしき手鞠てまりを両袖に捧げて出づ。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここに居て遊ぶ小児等こどもら、わが知りたるは絶えてあらず。風俗もまたかわりて見ゆ。わが遊びし頃は、うつくしく天窓あたまそりたるか、さらぬは切禿きりかむろにして皆いたるに、今はことごとく皆毬栗いがぐりに短くはさみたり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
少しおくれて、童男どうだん童女どうじょと、ならびに、目一つの怪しきが、唐輪からわ切禿きりかむろにて、前なるはにしきの袋に鏡を捧げ、あとなるはきざはしくだり、巫女みこの手よりを取り受け、やがて、欄干らんかん擬宝珠ぎぼうしゅの左右に控う。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
幕のすそから、ひょろりと出たものがある。切禿きりかむろで、白い袖を着た、色白の、丸顔の、あれは、いくつぐらいだろう、うのだから二つ三つと思う弱々しい女の子で、かさかさとものの膝ずれがする。
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)