切地きれぢ)” の例文
もう一層進むと地毛ぢげひき詰めにして総体のかつらを着ける。其れがく軽くやはらかく出来て居て、切地きれぢでふうわりと毛を巻いた位にしか感ぜられないと云ふ事である。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
大阪へ出て古着を安く買つて来るのがお祖母ばあさんの自慢だつたやうですから、それも新しい切地きれぢで私のうちへ買はれて来た物でないと認めるのが当然だと思ひます。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
みな夜具やぐたゞ壁際かべぎははしくつたまゝきつけてある。卯平うへい其處そこ凝然ぢつた。箱枕はこまくらくゝりはかみつゝんでないばかりでなく、切地きれぢ縞目しまめわからぬほどきたなく脂肪あぶらそまつてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
花の型のある紙を切地きれぢ宛行あてがったり、その上から白粉おしろいを塗ったりして置いて、それに添うて薄紫色のすが糸を運んでいた光景さまが、唯涙脆なみだもろかったような人だけに、余計可哀そうに思われて来た。
刺繍 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
私はさうして塗骨の銀の扇の持主になりました。絵は桜の花で、四分通りの地が薄紅うすべににつぶされて居ました。母は舞扇が買はれる度に、扇の上に切地きれぢで縁を附けるのが好きでした。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)