六歳むつ)” の例文
二本榎にほんえのきに朝夕の烟も細き一かまどあり、主人あるじは八百屋にして、かつぎうりをいとなみとす、そが妻との間に三五ばかりなる娘ひとりと、六歳むつになりたる小児とあり
鬼心非鬼心:(実聞) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
私は五歳いつつ六歳むつの頃から、三日に一度か四日に一度、必ず母に呍吩いひつかつて、叔父の家に行つたものである。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
これが又一層不便ふびんを増すの料となつて、孫や孫やと、その祖父祖母の寵愛はます/\太甚はなはだしく、四歳よつ五歳いつゝ六歳むつは、夢のやうにたなごころの中に過ぎて、段々その性質があらはれて来た。
重右衛門の最後 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
先にけてか林のわき草原くさはらを濡れつゝきた母子おやこありをやは三十四五ならんが貧苦にやつれて四十餘にも見ゆるが脊に三歳みつばかりの子を負ひたりうしろに歩むは六歳むつばかりの女の子にて下駄を
木曽道中記 (旧字旧仮名) / 饗庭篁村(著)
児童こどもなかの遊びにも片親無きは肩すぼる其の憂き思を四歳よつより為せ、六歳むつといふにはまゝしき親を頭に戴く悲みを為せ、雲の蒸す夏、雪の散る冬、暑さも寒さも問ひ尋ねず、山に花ある春の曙
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
五歳いつゝ六歳むつになるまでと云ふもの、まるで薬と御祈祷ごきたうで育てられたからだだ——江戸の住居も最早もうお止めよ、江戸はちりごみの中だと云ふぢや無いか、其様そんな中に居る人間に、どう満足ろくなもののはずは無い
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
六歳むつの子が強く口めこらふるに父なるわれが何ぞわななく
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
六歳むつの日の恋
一握の砂 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)