先日こなひだ)” の例文
先日こなひだも前大統領タフト氏が田舎に旅行して、途中で道連れになつた農夫ひやくしやうを相手に、近頃農産物の値段が箆棒べらぼうに高くなつた事を話して
「私は歳を取らぬうちに身に藝をつけて置かうと思ひますから、半日だけ學校へやつて下さい。」と、先日こなひだおつゆは熱心に云つた。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
先日こなひだわたしは夢を見ましたがね、郷里くにで親類中の者が集つて何かして居るところを見ましたがね、何をして居るのやら薩張り解らなかつたのでしたがね……」
一家 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
「君に一つ聞いて貰ひたい事があるんだ、先日こなひだから吾輩広告の新案について思ひついた事があるもんだからね。ま、そこに掛け給へ。」
だから、旅行のことは私とお前との間ぎりで祕密ないしよにしといてお呉れな。先日こなひだ先方の男に會つてよくよく話をして見ると、物分りのいゝそれはやさしい男なのだよ。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「如何もせんけど……先日こなひだ本村ほんむらのお春さんが豐後の別府に行つてからそんなに手紙を寄越したから……」
姉妹 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
上田敏博士の追悼会ついたうゑ先日こなひだ知恩院の本堂で営まれた時、九十余りの骸骨のやうな山下管長が緋の袈裟けさかぶつて、叮嚀にお念仏を唱へた。
猫を追ひ出すやうにこの睡眠ねむりの邪魔物を遠ざける譯には行かない。……で、彼れはランプを點けて、そつと自分の寢床を、先日こなひだまで良吉のゐた次の室へ持つて行つた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
それから二月ばかりして、新右衛門はまたなにがしやしきへ来た。そして座敷に飾りつけてあつた先日こなひだの屏風を不思議さうにじつと見てゐた。
始業時間までには餘程の暇があつたので、所在なさに、先日こなひだ兄に隨いて上つた山の方へ足を向けた。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
先日こなひだ米国のある地方で政治的の集まりがあつた。その席上で談話はなしいとぐちが、今の名高い政治家の宗教的所属といふ事に落ちて来た。
先日こなひだ、私が例のやうに濱邊の散歩をしてゐると、彼は、水桶をになつて汐水をくんでゐた。波打際で汐水をくむのは、呼吸があるので、馴れないものには六ヶしかつた。
吉日 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
京都の富岡鉄斎氏のところへ、先日こなひだ宮内省の属官なにがしといふ男がひよつくり訪ねて来た。属官は山鳩のやうにぐつと胸を反らして座敷に通つた。
そんな不量見な女はどうならうと私も構はないと先日こなひだきつぱり言ひ切つて來たのだけれど、折角丹精たんせいして育てたものが、今一時といふ間際になつて、こんな不面目なことになつちや
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
先日こなひだ東京の銀行集会所へ全国の重立おもだつた銀行家が集まつて、地震学で名高い大森博士を招待せうだいして、講演を頼んだ事があつた。
先日こなひだお國へ行つてゐた時に、良吉は默つてるけど、傍にゐると手頼たよりになると云つてゐましたよ。そして、身體からだとかけ替へで子供のために働くのだと、お母さんは云つてゐなすつた。
母と子 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
先日こなひだ職をやめて書肆ほんやを開業したさうだが、図書館に居るうちは、朝から晩まで、この書物の消毒にひどく頭を使つたものだ。
そんな頑丈な身體をしてるし、辛抱強いのに、机の前でいぢけてるのは詰まらないぢやないか。先日こなひだ山から見た島を借りて桃を栽ゑても、後ろの禿山はげやまひらいても何か出來さうぢやないか。
入江のほとり (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
B小説家の新作小説は、先日こなひだ月賦払ひでやつと買取つたモウパツサン全集の焼直しに過ぎないとかいふ事を、ごく内々ない/\吹聴ふいちやうするのを道楽にしてゐる。
先日こなひだ馬越の身體からだを細かに診察した後で内海は眞面目に忠告した。
仮面 (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
先日こなひだ中央公会堂で開いた黎明れいめい会の講演会に聴きに往つた人は、いつも黒木綿の紋附羽織に小倉のはかまときまつた福田徳三博士が、皺くちやではあつたが
さういふ訪問かくのなかに一人坊主があつた。つい先日こなひだの事その坊主はひよつくり犬養氏のやしきを訪ねて来た。
先日こなひだ硯と阿波侯についての話しを書いたが、姫路藩にも硯について逸話が一つある。藩の家老職に河合寸翁かはひすんをうといふ男があつて、頼山陽と硯とが大好きなので聞えてゐた。
古松研 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
先日こなひだの事、都路華香氏を訪ねて、いつものやうにそろそろ拝み倒しにかゝつたが、旋毛つむじ曲りの華香氏を動かすには何でも画家ゑかき仲間の悪口わるくちを言はねばならぬと思つたらしかつた。