まか)” の例文
その花粉かくの如き状態なるにより風の動くにまかせて容易に散乱し、またその柱頭はその花粉を受くるに便せんが為めにここにその体を長くし
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
既に如此かくのごとくなれば、怪はいよいよ怪に、あるひは夢中に見たりしあとなほ着々ちやくちやく活現しきたりて、飽くまで我をおびやかさざればまざらんと為るにあらずや、と彼は胸安からずも足にまかせて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ある日往くともなしに足にまかせて断橋へ往ったところで、左側に竹林があってその内から高い門が見えていた。近くへ往って見るとその門には喬木世家きょうぼくせいかというがくをかけてあった。
断橋奇聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
葛かつて酒を被り、たまたまその肆に坐し、手にまかせて繙閲す。一夕民家火おこり、およそあるところの物、文書をあわせてみな燼す。物主競い来たりて、数倍の売償を求む。民もって質験するなし。
菜籠なかごを担って晨朝あしたに銭六、七百を携え、蔓菁かぶら、大根、蓮根れんこん、芋を買い、わが力の限り肩の痛むももののかずともせず、脚にまかせてちまたを声ふり立て、かぶらめせ、大根はいかに、蓮も候、芋やいも、と呼ばわりて
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
 風にまかす両三枝。
閉戸閑詠 (新字旧仮名) / 河上肇(著)
貫一は苦しさにへで振釈ふりほどかんともがけども、嘉納流かのうりゆうの覚ある蒲田が力に敵しかねて、なかなかその為すにまかせたる幾分の安きを頼むのみなりけり。遊佐は驚き、風早も心ならず
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
かかるたはむれしてはばからず、女も為すままにまかせてとがめざる彼等の関繋かんけいそもそ如何いかに。事情ありて十年来鴫沢に寄寓きぐうせるこの間貫一はざまかんいちは、此年ことしの夏大学にるを待ちて、宮がめあはせらるべき人なり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)