侏儒しゅじゅ)” の例文
防寨ぼうさいの者らは声を立てた。しかしこの侏儒しゅじゅの中には、アンテウス(訳者注 倒れて地面に触るるや再び息をふき返すという巨人)
福羽氏は津和野藩士ですが、中央に出て出世をなすったので、西周にしあまね氏の男爵、福羽氏の子爵が郷人の誇なのでした。福羽氏は侏儒しゅじゅでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
クリストフは、びんの中に侏儒しゅじゅをでも孵化ふかさせるために蒸留器を大事にあたためてる、それらワグナー派の学者たちに背を向けた。
一ばん困ることは、その扉を開けかけるとその隙間から、まず、結婚前のお互の想い出の辛い悲しい侏儒しゅじゅがちろちろと魂に忍び込むことでした。
扉の彼方へ (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
侏儒しゅじゅの言葉」十二月号の「佐佐木茂索君の為に」は佐佐木君をけなしたのではありません。佐佐木君を認めない批評家をあざけったものであります。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そこで、今かりにここに侏儒しゅじゅの国があって、その国の人間の身体の週期がわれわれの週期の十分の一であったとする。
空想日録 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
まるで侏儒しゅじゅか、せいぜい博労ぐらいにしか見えない男でした、けれども彼は全く博労はくろうとも見えませんでしたわ
この老人は、耳の辺まで垂れた白毛しらがを残して、てかてかに禿げ上っているが、身体は十一、二の子供くらい——どこからどこまでが、典型的な侏儒しゅじゅだったのである。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
身長せいが人並みよりきわ立って低く、頭が人並みよりとりわけ大きく、侏儒しゅじゅ佝僂せむしかを想わせた。そういう金兵衛がそういったようすで、あえぎあえぎ走って行くのである。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
メニューインの演奏には、少しのひねこびたところがない——多くの天才少年と称する精神的侏儒しゅじゅの芸術と、根本的に違う所以ゆえんだ。メニューインには楽曲に対する驚くべき理解がある。
封建鉄網細工の成功は、日本国民をして精神的の侏儒しゅじゅたらしめたりき。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
人の家に出入いでいりする、まめやかなる侏儒しゅじゅ
「道州ノ民、侏儒しゅじゅ多シ」
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
微賤びせんであるこの侏儒しゅじゅは、やがてイオニア人(哲人)となるであろうか、またはベオチア人(ばか)となるであろうか。
わたしはこの綵衣さいいまとい、この筋斗きんとの戯を献じ、この太平を楽しんでいれば不足のない侏儒しゅじゅでございます。どうかわたしの願いをおかなえ下さいまし。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
全身、蒼黒あおぐろくなりその上、やせさらばう骨のくぼみの皮膚にはうす紫のくままで、漂い出した中年過ぎの男は嵩張かさばったうしろくびこぶに背をくぐめられ侏儒しゅじゅにして餓鬼のようである。
食魔 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
儀右衛門は、この老侏儒しゅじゅの身体を抱き下しながら、われともなくそう云った。
人魚謎お岩殺し (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
しかし、メニューインを、その故に怪奇な侏儒しゅじゅと思ってはいけない。
しかし今では、この凱旗門のかかとの下に、侏儒しゅじゅどもが蠢動しゅんどうしていた。
もとも小さき侏儒しゅじゅ等には
侏儒しゅじゅは連隊の鼓手長を崇拝する。がまは常に目を空の方に向ける、なぜであるか、鳥の飛ぶのを見んがためである。
侏儒しゅじゅや獣身のものを交ゆ。彼等の武器に使うものは現代の婦人の使う面紗ヴェールに似て居り、または天平の婦人のヒレに似て居る一種の長絹である。各七色に染め分けられたるその一片を持つ。
阿難と呪術師の娘 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
するとまず記憶に浮かんだのは「侏儒しゅじゅの言葉」の中のアフォリズムだった。
歯車 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
あたかも傷つけ得べからざる戦いの侏儒しゅじゅであった。弾丸は彼を追っかけたが、彼はそれよりもなお敏捷だった。
侏儒しゅじゅの言葉」の序
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いかんせん、巨人は侏儒しゅじゅの役を演じ、広大なるフランスは好奇にも些事さじを事とする。策の施しようはない。
恐れていた者をついにうち倒しびていた者をついに侮辱してやったという残忍卑怯ひきょうな弱者の喜びであり、巨人ゴライアスの頭を土足にかける侏儒しゅじゅの喜びであり