仲善なかよし)” の例文
「えゝ。んだにいさんが広田先生とは大変仲善なかよしだつたさうです。それに美禰子さんは英語がすきだから、時々英語を習ひに入らつしやるんでせう」
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
と賢ちゃんが言掛けると、仲善なかよしの友の言う事だが、私は何だか急に口惜くやしくなって、かっ急込せきこんで
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「太郎さん、もう仲善なかよしになろうね。僕が此れから行くから姉さんのところへ連れて行ってくれたまえ」
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
九四 この菊蔵、柏崎なる姉の家に用ありて行き、振舞ふるまわれたる残りのもちふところに入れて、愛宕山のふもとの林を過ぎしに、象坪ぞうつぼの藤七という大酒呑おおざけのみにて彼と仲善なかよしの友に行き逢えり。
遠野物語 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この老人としよりが僕の仲善なかよしでしたが、或日あるひ僕に囲碁の遊戯あそびを教えてれました。
運命論者 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
乃公が悪戯をしやしまいかと思ってお母さんもお歌さんも気をつけているが、乃公は百合子さんと仲善なかよしだから決して悪い事はしない、百合子さんは乃公よりか二つ年が上だ。
いたずら小僧日記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
お延は津田の提議に同意する前に、少し首を傾けた。細君と仲善なかよしの津田はまた充分成効せいこうの見込がそこに見えているので、熱心にそれを主張した。しまいにお延はとうとうを折った。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
仲善なかよし二人肩へ手を掛合って行く前に、弁当箱をポンとほうり上げてはチョイと受けて行く頑童いたずらがある。其隣りは往来の石塊いしころを蹴飛ばし蹴飛ばし行く。誰だか、後刻あとで遊びにくよ、とわめく。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
父はこの二人とうたいの方の仲善なかよしと見えて、彼らが来るたびに謡をうたってたのしんだ。お重は父の命令で、少しの間つづみ稽古けいこをしたおぼえがあるので、そう云う時にはよく客の前へ呼び出されて鼓を打った。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)