以太利イタリー)” の例文
而して儒教の風教を支配する事能はざるは、往時以太利イタリー羅馬ローマ教の勢力地に堕ちて、教会は唯だ集会所たるが如き観ありしと同様の事実なり。
「おい何故なぜやすんだ。今日けふ以太利イタリー人がマカロニーを如何にして食ふかと云ふ講義を聞いた」と云ひながら、そばつて来て三四郎の肩を叩いた。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
英吉利イギリスの詩人が以太利イタリーへ遊んだ時、ベニスの町で年頃な娘をもった家の母親はあの美貌で放縦な人を見せまいとして窓を閉めたというではないか。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
男はマグダの故郷に帰って、立派な紳士になりすましていると同時に、マグダは以太利イタリーで有名なうたになる。めぐり回って故郷へ興行に来る。父母と和解する。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
故郷は之れ邦家なり、多情多思の人の尤も邦家を愛するは何人か之を疑はむ。孤剣ひつさげ来りて以太利イタリーの義軍に投じ、一命を悪疫にしたるバイロン、我れ之を愛す。
富嶽の詩神を思ふ (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
以太利イタリーの旅行を終えて岸本の宿へ土産話みやげばなしを置いて行った人には京都大学の考古学専攻の学士がある。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ダヌンチオによって代表される以太利イタリー文学の不安を、無制限の堕落から出る自己欠損の感と判断していた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「彼は詩を捨てた。詩もまた彼を捨てた。彼は以太利イタリーの方へ出掛けて行った、そして死んだ」
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
バイロンの嵩峻を以ても、の貞淑寡言の良妻をして狂人と疑はしめ、去つて以太利イタリーに飄泊するに及んでは、妻ある者、むすめある者をしてバイロンの出入を厳にせしめしが如き。
厭世詩家と女性 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
ただ心が陽気になれないだけなのですが、夫の方では最愛の細君の一顰一笑いっぴんいっしょうも千金より重い訳ですから、捨ておかれんと云うので慰藉いしゃかたがた以太利イタリーへ旅行に出かけます。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ある人が以太利イタリーに留學したばかりの頃、その人を泊めた宿の以太利の婦人は不審を打つて
桃の雫 (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
以太利イタリーは如何に斧鉞ふゑつを加へて盛衰興亡の運命を悟らしむるも、其の以太利たるは依然として同じ、独逸ドイツも亦た斯の如し、仏蘭西フランスも亦た斯の如し。国民の元気の存する処に其の予定の運命あり。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
以太利イタリーのさるヴァイオリニストが旅行をして、しばらく、ポートサイドに逗留とうりゅうしておりました時、妙齢の埃及エジプトの美人に見染みそめられまして親しき仲となったそうでございます。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
而して其中間にはさまれたる以太利イタリーは遂に如何いかならむ。邦運久しく疲れて産業興らず。民多くは一種固有の疾疼しつとうくるしむ。而して国境を守るの兵は日に多く、せたる民衆に課するの税斂ぜいれんは月に加ふ。
想断々(2) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
兄はくさい煙草の煙の間から、始終しじゅう自分の顔を見つめつつ、十三世紀だか十四世紀だか解らない遠い昔の以太利イタリーの物語をした。自分はその間やっとの事で、不愉快の念を抑えていた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
話し相手としては、兄よりも嫂の方が、代助に取ってはるかに興味がある。兄にうときっとどうだいと云う。以太利イタリーに地震があったじゃないかと云う。土耳其トルコの天子が廃されたじゃないかと云う。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
むか以太利イタリーの大家アンドレア・デル・サルトが言った事がある。画をかくなら何でも自然その物を写せ。天に星辰せいしんあり。地に露華ろかあり。飛ぶにとりあり。走るにけものあり。池に金魚あり。枯木こぼく寒鴉かんああり。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)