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仄
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ほのめ
ふりがな文庫
“
仄
(
ほのめ
)” の例文
その草もない
薄闇
(
うすやみ
)
の路に、銃身を並べた一隊の兵が、
白襷
(
しろだすき
)
ばかり
仄
(
ほのめ
)
かせながら、静かに
靴
(
くつ
)
を鳴らして行くのは、悲壮な光景に違いなかった。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その母は三沢の看護婦に、氷ばかりも二十何円とかつかったと云って、どうしても退院するよりほかに
途
(
みち
)
がないとわが窮状を
仄
(
ほのめ
)
かしたそうである。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
表二階
(
おもてにかい
)
の、狭い三
畳
(
じょう
)
ばかりの座敷に通されたが、案内したものの顔も、
漸
(
や
)
つと
仄
(
ほのめ
)
くばかり、
目口
(
めくち
)
も見えず、
最
(
も
)
う暗い。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
と或る場合に対する異常な決意を
仄
(
ほのめ
)
かせて、滝人はきっと唇を噛んだ。しかし、その硬さが急に
解
(
ほぐ
)
れていって、彼女の眼にキラリと
紅
(
あか
)
い光が
瞬
(
またた
)
いた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
と念の為めに
仄
(
ほのめ
)
かして置いた。話題に至っても先刻で懲りているから、一身上のことは避けるようにした。
女婿
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
何事も打明けて相談して見たら随分力に成ってくれそうな、思慮と激情とが同時に一人の人にあるこの友人の顔を見ながら、岸本は自分の身に起ったことを
仄
(
ほのめ
)
かそうともしなかった。
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「あの時にきつと移つたずら」——お住は医者の帰つた後、顔をまつ赤にした患者のお民にかう非難を
仄
(
ほのめ
)
かせたりした。
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それも懐素のような奇怪な又
飄逸
(
ひょういつ
)
なものではありません、もっと柔らかに、もっと穏やかに、そうして時々粋な所を
仄
(
ほのめ
)
かすといったような草書です。
木下杢太郎『唐草表紙』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
頭を下げて聞き出しては我が折れる。二人で寄ってたかって人を馬鹿にするつもりならそれでよい。二人が
仄
(
ほのめ
)
かした事実の反証を挙げて鼻をあかしてやる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
信子も亦一方では彼等の推測を打ち消しながら、他方ではその確な事をそれとなく故意に
仄
(
ほのめ
)
かせたりした。
秋
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ならば
糺
(
ただす
)
の森あたりの、
老木
(
おいき
)
の下闇に致したかった。あすこは夏の月夜には、せせらぎの音が間近く聞えて、
卯
(
う
)
の花の白く
仄
(
ほのめ
)
くのも一段と
風情
(
ふぜい
)
を添える所じゃ。
邪宗門
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
僕等は
暫
(
しばら
)
く浪打ち際に立ち、浪がしらの
仄
(
ほのめ
)
くのを眺めていた。海はどこを見てもまっ暗だった。僕は
彼是
(
かれこれ
)
十年
前
(
ぜん
)
、
上総
(
かずさ
)
の或海岸に滞在していたことを思い出した。
蜃気楼
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
“仄”の意味
《名詞》
(ソク)仄韻。また、その字。
(出典:Wiktionary)
仄
漢検1級
部首:⼈
4画
“仄”を含む語句
仄暗
平仄
仄白
仄明
仄々
仄紅
逼仄
仄闇
仄聞
仄見
仄青
仄筆
仄赤
仄紅色
仄白々
仄浮
仄起
仄透
仄歩
仄黄色
...