人数ひとかず)” の例文
旧字:人數
だが、やがて蒸汽ポンプの威力は、さしもの火勢を徐々にしずめてゆき、見物達も安心したのか、一人去り二人去り、段々人数ひとかずが減って行った。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この港は佐伯町さいきまちにふさわしかるべし。見たまうごとく家という家いくばくありや、人数ひとかずは二十にも足らざるべく、さみしさはいつも今宵こよいのごとし。
源おじ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
路のわかれる毎に人数ひとかずが減つた。とある路傍の屋根の新しい大きい農家の前に来た時、其処まで一緒に来た村長は、皆を誘つて其の家に入つて行つた。
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
けだし、この年配としごろの人数ひとかずには漏れない、判官贔屓ほうがんびいきが、その古跡を、取散らすまい、犯すまいとしたのであった——
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
大きいたってわたくしは実に驚きました、醤油を三十石ぐらい造るんで、蔵の中に居る人数ひとかずが四五十人ぐらいも有って、事が大きいたって、あのかまどの釜は何うでげす
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
いかにもがけばとて、目に余る人数ひとかず、ことに二人が必死の強剣、それをあしらうだけでも、今では容易ならぬ春日重蔵。ああ、彼に一本の足さえ満足であったならば——
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何でもたいした人数ひとかずが居るのぢや御座いませんか、それならもう少し気のいた、肌合はだあひの好い、うれしい人に撞見でつくはしさうなものだと思ひますのに、一向お目に懸りませんが、ねえ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
今日私もやっと人数ひとかずになってみますと、散らかっております子供が気になりまして、正直に拾い集めてみますと、またそれぞれ愛情が起こりまして、皆かわいく思われるのですが
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
眼には見えないが、そこらに眠ってる人数ひとかずが幾何級数的に殖えてゆく。その無数の口から吐き出される息が、積り積って、なま温くのしかかってくる。穢らわしい擽ったい感触である。
(新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
おっとだけによく知っていたから、なるべくは、人数ひとかずやしてうちの中を混雑ごたつかせたくないとは思ったが、事情やむを得ないので、成るがままにしておくよりほかに、手段の講じようもなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
二十人ばかりの職場からの若い連中が集っているのだが、椅子が人数ひとかずだけない。山羊皮の半外套を着た若い労働者が三四人、床の上でじかに膝を抱え、むき出しな板の羽目へよっかかっている。
エレベーターが忙しく上下して、西村商会の社員ばかりでなく、ほかの部屋の人達も五階に集って来た。一方街路の死体の所には、刻一刻人数ひとかずが増して行った。
内侍所ないしどころに召されて、ろくおもきものにてそうろうにと申したりければ、とても人数ひとかずなれば、ただ舞はせよとおおせ下されければ、静が舞ひたりけるに、しんむしやうの曲と言ふ白拍子しらびょうしを、——
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
郷里へ帰ってからは以前にも増した物思いをする人になって、人数ひとかずでない身の上をなげき暮らしていた。もう京へ源氏の着くころであろうと思ってから間もなく源氏の使いが明石へ来た。
源氏物語:14 澪標 (新字新仮名) / 紫式部(著)
そのほかおびただしい人数ひとかずが、ドッと流れだしてきて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内侍所ないしどころに召されて、ろくおもきものにて候にと申したりければ、とても人数ひとかずなれば、ただ舞わせよと仰せ下されければ、静が舞いたりけるに、しんむしょうの曲という白拍子を、——
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人数ひとかずは少なくて、姉上と、その父と、母と、下婢かひとのみ、ものしずかなる仕舞家しもたやなりき。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もう誰の蔭になったか人数ひとかずに紛れてしまった。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)