交易こうえき)” の例文
それを子供がほしがると自分のはてて、人の上げた分を持ってかえるのを、彼等は「組んで来る」といって、馬の交易こうえきのように思っている。
年中行事覚書 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
なにしろ北京一流の豪商の大旦那が、自身で交易こうえきがてらの泰山廟詣たいざんびょうまいりというので下にもおかず、お供の端まで日々、とんだいい目のご相伴しょうばんにあずかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それが交易こうえきというものだ——交易の講釈は貴様がお師匠で、飽きるほど聞かされている、いやとは言えまい
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
すなわち家婦かふにんにして、昼夜のべつなく糸をつむ木綿もめんを織り、およそ一婦人、世帯せたいかたわらに、十日のろうを以て百五十目の綿を一反の木綿に織上おりあぐれば、三百目の綿に交易こうえきすべし。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
彼は、それと交易こうえきするために、自分の持物の中で、土人の欲しがりそうなものをいろいろ考えてみた。土人の欲しがりそうなものは、自分の生活にも欠くべからざるものだった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
戸倉村よりは他の物品を此処にち来り以て之を交易こうえきし、其間あへて人の之を媒介ばいかいするものなく、只正直と約束やくそくとをまもりて貿易ばうえきするのみと、此に於て前日来より「あるこーる」にかつしたる一行は
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
その翌日白いテントの主人が出て来て乾葡萄、乾桃、乾棗ほしなつめなどを持って来まして私の泊って居る主のラマと交易こうえきしました。それは何と交易するかと言うと羊の毛あるいはバタと交易するんです。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
幾月かに一度ずつ、文明の製品を積んだ洛陽船が、この地方へも下江かこうしてきた。そして沿岸の小都市、村、部落など、市の立つところに船を寄せて、交易こうえきした。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
仲間でない人々が顔を合わす機会は、もとは交易こうえきの時ばかりであったゆえに、同じ用語を以ていわゆる雀色時の、人に気を許されぬ時刻を形容したのではなかったか。
かはたれ時 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
嘉永年中アメリカ人渡来せしより外国交易こうえきのこと始まり、今日の有様に及びしことにて、開港の後もいろいろと議論多く、鎖国攘夷じょういなどとやかましく言いし者もありしかども
学問のすすめ (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「そりゃどうも奇態きたいだ。モンラムという大祈祷会だいきとうえがあって沢山な人が集まって来るほどなれば、市内に居て交易こうえきでもすれば金がもうかるではないか。どういう訳で市民がかえって地方へ逃げて行くのか」
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
また或は各地の固有に有余ゆうよ不足ふそくあらんには互にこれを交易こうえきするもなり。すなわち天与てんよ恩恵おんけいにして、たがやして食い、製造して用い、交易こうえきして便利を達す。人生の所望しょもうこの外にあるべからず。
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
有難味も真の値打ねうちも……。よろしい、こん夜ここでの楮幣は、明日、わしの佐女牛の屋敷へ持参せい。——わが家の倉にある伽羅きゃら、油、そうの薬、白粉、唐織からおり、珠、釵子かざし、欲しい物と交易こうえきしてやる。