乗込のりこ)” の例文
旧字:乘込
至急という事なので、朝の旅客機で旭川まで飛び、そこから青沼線の軽便鉄道に乗込のりこんだのが、七月はじめの雨催あめもよいの午後一時であった。
殺生谷の鬼火 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
お駒は手軽に吹屋町に乗込のりこみました、が、宏大な屋敷の中に入って、幾十人の召使の中に立ちまじわると、今更いまさらお駒の美しさが目に付きます。
黄金を浴びる女 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
擬勢ぎせいを示した。自動車は次第に動揺が烈しくなって乗込のりこみました。入江に渡した村はずれの土橋などは危なかしいものでした。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
平八郎は一行に目食めくはせをして、此舟に飛び乗つた。あとから十三人がどや/\と乗込のりこんだ。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
さてやがて乗込のりこむのに、硝子窓ガラスまど横目よこめながら、れいのぞろ/\と押揉おしもむでくのが、平常いつもほどはだれ元気げんきがなさゝうで、したがつてまで混雑こんざつもしない。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うして逢えたのも、深い縁じゃないかねエ欽さん、——いくら私が図々しくたって、旗本のお屋敷へ、誓紙起証を振り廻して乗込のりこむわけにも行かず
芳年写生帖 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
日が暮れて、やがて嫁御寮が乗込のりこんで来ようという時、同じ牙彫職仲間の友吉ともきちというのが、たった一人の客として、あわて気味に飛込んで来ましたが
片輪車かたわぐるま変化へんげが通るようで、そのがたんと門にすれた時は、鬼が乗込のりこ気勢けはいがしました。
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
乗込のりこんでから、またどうか云う工合で、女たちが二人並ぶか、それを此方こっちから見る、と云ったふうになると、髪の形ばかりでも、菩提樹ぼだいじゅか、石榴ざくろの花に、女の顔した鳥が、腰掛けた如くに見えて
甲乙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
渡場わたしばに着くと、ちょうど乗合のりあいそろッていたので、すぐに乗込のりこんだ。船頭は未だなかッたが、ところ壮者わかいものだの、娘だの、女房かみさん達が大勢で働いて、乗合のりあい一箇ひとつずつおりをくれたと思い給え。見ると赤飯こわめしだ。
取舵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はじめて一人ひとり乗込のりこんだきやくがある。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)