串刺くしざ)” の例文
あぶなく串刺くしざしになるところを、あッと踏み退いた雲霧は、この時初めて、勘定に入れなかったこのチビが手強てごわ厄介者やっかいものであったのに気が着いて
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
窓のある土間の上に、川魚の串刺くしざしが吊るしてある。畳敷の方には仏壇代りの箱に男名前の位牌が置いてある。片隅に飴売りに出る着物、笠などと道具がある。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
つまり一つの句をたとえばピアノの譜で縦に重畳した若干の重音の串刺くしざしに相当させることができる。
連句雑俎 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
父は芦に串刺くしざしにされて悶死もんししたそうです。そして父がみすべって落ちたと言いふらさせたのです。
俊寛 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
同じ大根おろしでも甘酢あまずにして、すりゆずの入れ加減まで、和尚の注意も行き届いたものであった。塩ゆでの枝豆、串刺くしざしにした里芋の味噌焼みそやきなぞは半蔵が膳の上にもついた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
兵馬が前の調子で進んで行けば、米友は勢いこの大榎の幹へ串刺くしざしに縫いつけられる。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
払うどころか、躍動する刀影を眼前に、さッと乾雲の手もとがおのが胴へ引いたと見るや、上身をそらせて栄三郎の鋭鋒を避けながら、右下からはすに、乾雲、つばまで栄三郎を串刺くしざしに。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
青年捕縛されて串刺くしざしに処せられた。
風を切って飛んだ投げ槍は、ぐざと、胡軫こしんのどを突きとおし、しかも胡軫こしんのからだを馬の上からさらって、串刺くしざしにしたまま大地へ突き立ってしまった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
小文治は敵を串刺くしざしにして、大樹たいじゅの幹につき立ったやりをひき抜き、穂先ほさきこぼれをちょっとあらためてみた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そこに串刺くしざしとなった死骸よりも先にその方をジッとすかして見ると、がらの小さな、もんぺを穿いたひとりの小童こわっぱがいきなり山刀を抜きそうにしてくるので
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
離れたり集まったりする影法師には皆、長やかな刀のこじりか、横たえている槍の影が串刺くしざしになっていた。そしてその中には、一人の卑怯者らしいものもなかった。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
屋根廂やねびさしからななめさがりに、ぴゅッと一本の朱槍しゅやりが走って、逃げだしていく佐分利の背から胸板をつらぬいて、あわれや笑止しょうし、かれを串刺くしざしにしたまま、けやきみきいつけてしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あわや、槍は飛んで、魏延の背を串刺くしざしにするかと思われた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「残ったやつらは、この小七、小五が、もりのさきで串刺くしざしか」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)