世上せじょう)” の例文
世上せじょうの有力者を一人残らず網羅することになって、とてもできない相談だから、残念ながらこの辺でやめるが、とにかくこの旅人は
僕自身のわずかの経験においてもそういうことが多い。しかしてまた世上せじょう聖人君子が少なき以上、同じ経験をめるものが多いであろう。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
「しかし、あれを見ても、もう春は過ぎ夏も近いに。——以来、この城に、魚の跳ねる音しかせぬは、世上せじょう成行なりゆきは如何いたしたものか」
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
センチメンタルな気風はセンチと呼んで唾棄だき軽蔑けいべつされるようになったが、世上せじょう一般にロマンチックな気持ちには随分ずいぶんあこがれを持ち、この傾向は追々おいおい強くなりそうである。
では、彼はそうして、あらゆる世上せじょうのことを放擲して、一体何を夢見ていたかと云いますと、それは、彼自身の理想郷、無可有郷むかゆうきょうのこまごました設計についてでありました。
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
盗んで、太い奴らでございます。後のため、世上せじょうへの示し、箱の仕掛けをよく御覧下さいまし
「望めと言うなら、言ってみよう。願いをあげて退役するからには、ついでのことに、溜間詰たまりのまづめを仰せつけられたら、家の面目、世上せじょうの聞え、いかばかりか晴れがましくあろう」
無惨やな (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
うす/\世上せじょうのとりさたをおきゝこみになりましたか、またはむしがしらせたと申しますものか、いつからともなくけはいをおさとりあそばしてきっと御しあんなされたらしゅう
盲目物語 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
しかりといえども彼はこれら資格の外に、なお特別の本色を有す、曰く、不穏ふおんの精神これなり。パスカルいえるあり、「もし人安んじて一室に静坐するを得ば、世上せじょう禍害の大部はきたらざるべし」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「市之助はおれに隠れろと言う。しかし半九郎にそんなうしろ暗いことは出来ぬ。正直に今ここで切腹する。若松屋のお染の客は人殺しとあすは世上せじょううたわれて、お身も肩身が狭かろうが、これも因果いんがだ。堪忍してくれ」
鳥辺山心中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
権門けんもんの仕事はあじけない。先生は、そう仰っしゃいますが、世上せじょうの絵師は、みなあなた様を、羨望せんぼうの的としております」
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平次は相変らず世上せじょうの春を、貧乏くさく眺めているのでしょう。
などで、ちょっとはしからみてもその階級かいきゅうさまざまで人数ももっとも多いけれど、射術しゃじゅつ馬術ばじゅつの方になると、およそ世上せじょう定評ていひょうのある一りゅうの人やその門下もんかの名が多い。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一方をはらえば、またべつな一面に躍って出るのだ。世上せじょうでよく
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)