不撓ふとう)” の例文
彼女は不撓ふとうな精神で、自分の境遇の条件を一貫した目的に従わせ、そのために活かしてつかって行くという生涯の態度を学んだのであった。
理想の不撓ふとうなる理論をもって大業を果たさんために戦うそれらの人々は、たとい倒れても、またことに倒れたがゆえに、崇高たるのである。
コロレンコの不撓ふとうの実践力や、チェーホフの魔のごとき現実直視の力によってうけ継がれることになったのを思えば
意気軒昂けんこう、不屈不撓ふとう、孤岩屹立きつりつ、多少めちゃくちゃな感じかもしれないがおれとしても無関心ではいられなかったさ。
陽気な客 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
その比類なき魅力は、豊饒ほうじょうなりっぱな土地にかかってるとともにまた、不屈不撓ふとうな民衆の努力にかかってるのだった。
揉み立てられ、揺すられ、ぎ倒されながら瘠せさらばえた初老のひとが、二十代の青年のような精力と不撓ふとうの努力でジリジリと槇子の方へ迫ってゆく。
キャラコさん:01 社交室 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
頑健なる巨躯、鉄の如き神経、不屈不撓ふとうの意志、それらのものが完全に兇悪なる支倉を屈服せしめたのである。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
何ぞはからんその翌日君は再びカンヴアスを抱へて渋川に到り十分に画き直して一週間の後帰京せり。余は今更に君が不屈不撓ふとうの勇気に驚かざるを得ざりき。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
すきの刃のように、または盲の土竜もぐらのように、行き当りばったりに、その不撓ふとう不屈の鼻を前へ押し出す。
博物誌 (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
実にこうした思索の点では、僕は自分の柄にもなく、地獄の悪魔の如き執念深さと、不撓ふとう不屈の精神を有している。倒れても倒れても、僕は起きあがって戦ってくる人間だ。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
カリフォルニアの金とヤンキーの不撓ふとうの精力のおかげで、太平洋の両岸はたちまちのうちに、今日ボストンからニューオルリーンズにいたる海岸同様の人口を持つこととなり
うたっていくうちにかれの顔はますます黒く赤らみ、その目は輝き、わが校を愛する熱情と永遠の理想と現在力学の勇気と、すべての高邁こうまい不撓ふとうな奮闘的な気魄きはくがあらしのごとく突出してくる。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
不撓ふとうの勇をふるいおこして、日々、自己の裁きに、むかっていた。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実に今日の光化門は、その不撓ふとうな精神の大胆な披瀝であった。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
この老人のうちには堅忍不撓ふとうな人物を思わせるものがあった。かく臨終に近づいていながら、彼は健康の外見を保っていた。
もし予にして、不断不撓ふとうなる活動もて、人間にそののっとるべき実例を与うることなくんば、人間はみな滅びせん。
そういう雄々しいやさしさというものは実に不撓ふとうの意志とむすびついて居り、堅忍と結びついて居り、しかもストイックでないだけの流動性が活溌に在る、そういうところに
知識ではなく、不撓ふとう不屈の精神だけがこの仕事をなしとげさせるであろうということも。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
しかし検察官の不撓ふとうなる熱心のために、彼はついに仮面をはがれて逮捕された。一人の醜業婦のめかけがあったが、彼が逮捕さるるとき驚きのあまり死んだ。
彼らの多くがもっている、献身の力、傲慢ごうまんなる冷静、最善にたいする愛と欲求、不撓ふとうの精力、世に隠れたる執拗しつような労苦、それらをことごとく俺は知っている。
同志蔵原をはじめ、多くの同志たちの不撓ふとうの闘争が語られてある。その中に自分の名も加わっている。読んでいるうちに覚えず涙がこぼれそうになった。このような涙を見せてやるのは勿体ない。
刻々 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
そのうえ彼女は、もっとも絶望的な情況にあっても、不撓ふとうの希望をもちつづけることができるのだった。
当時の検察官はその機会において、社会の秩序防衛についての不撓ふとうな熱心を示した。
彼女の不撓ふとうな根気強さもラジウムに到達することはなかった。
その気力は、不撓ふとうなそしておおむね熱狂的な精励さと、不思議に結合してるのだった。中流階級の種々の方面で彼が出会う人々は、ほとんどすべて不満家だった。
豪侠ごうきょう、献身、騒暴なる快活、勇気は知力の一部たることを示す学生、不撓ふとう不屈なる国民兵、商人の露営、浮浪少年の要塞ようさい、通行人らの死を恐れざる心、などをまっかにしかも燦然さんぜんと照らし出した。
この曲は自由気ままなフーガで成っていて、その大胆な構想と執拗しつよう律動リズムとは、ついに主人公の一身をつかみ取って、奮闘と涙との中で、不撓ふとう不屈な信仰に満ちてる力強い行進へ導いていた。
たとい跣足はだしで幾世紀間歩かせられようと、幾多の艱難かんなんをも忍んで、いかなる喜びと不撓ふとうの熱心とをもって、彼女を捜しに突進したことであろう!……そうだ、彼女のところへ行き得る機会が