下屋げや)” の例文
宿やどと、宿やどで、川底かはそこいはゑぐつたかたちで、緑青ろくしやうゆき覆輪ふくりんした急流きふりうは、さつ白雲はくうんそらいて、下屋げやづくりのひさしまれる。
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
東と北に一間の下屋げやをかけて、物置、女中部屋、薪小屋、食堂用の板敷とし、外に小さな浴室よくしつて、井筒いづつも栗の木の四角な井桁いげたえることにした。畑も一たん程買いたした。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
天保元年に、京都に地震があり、ほうぼうの築地ついじ下屋げやが倒壊したが、その修理もまだできていない。公卿の館も堂上の邸も、おどろしいばかりに荒れはて、人間の住居とも思われない。
奥の海 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
風の暴頻あれしき響動どよみに紛れて、寝耳にこれを聞着ききつくる者も無かりければ、誰一人いでさわがざる間に、火は烈々めらめら下屋げやきて、くりやの燃立つ底より一声叫喚きようかんせるはたれ、狂女は嘻々ききとして高く笑ひぬ。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
ジインと鉄瓶の湯の沸く音がどこか下の方にしずかに聞え、ざぶんと下屋げやの縁側らしい処で、手水鉢ちょうずばちの水をかえす音が聞える。
雪柳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
泰文は天羽を括って下屋げやの奥へ放りこむと、こんどは保平の僕を吊しあげた。
無月物語 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
まどけると、こゝにもぶ。下屋げや屋根瓦やねがはらすこうへを、すれ/\に、晃々きら/\、ちら/\とんでく。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)