一具ひとつ)” の例文
枕許まくらもとの、矢張やはたなにのつた、六角形かくがたの、蒔絵まきゑ手筐てばこをおけなすつたんですよ。うすると、……あのお薬包くすりつゝみと、かあいらしい爪取剪つめとりはさみ一具ひとつと、……
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……きふごしらへのあぶらりないしらちやけた提灯ちやうちん一具ひとつに、ちひさくなつて、家中うちぢうばかりぱち/\として、陰氣いんき滅入めいつたのでは、なんにも出來できず、くちもきけない。
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いかり一具ひとつすわつたやうに、あひだ十間じつけんばかりへだてて、薄黒うすぐろかげおとして、くさなかでくる/\と𢌞まはくるまがある。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のぞくまでの事はない。中でも目に立った、落着いて花やかな彩色いろどり花瓶はながめ一具ひとつ、まだ飾直しもしないと見えて、周囲一尺、すぽりと穴のあいたようになっているのだから。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)