“わたしば”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
渡場62.9%
渡船場14.3%
渡頭8.6%
渡舟場5.7%
渡口2.9%
渡口場2.9%
渡船塲2.9%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
然し渡場わたしばいまこと/″\く東京市中から其の跡を絶つた訳ではない。両国橋りやうごくばしあひだにして其の川上かはかみ富士見ふじみわたし、その川下かはしも安宅あたけわたしが残つてゐる。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
水が枯れて河原の広広ひろびろとした大きな河が来た。勘作はこの河ではないかと思って、渡船場わたしばにおりようとする河土手になった林の中を注意して歩いていた。
ある神主の話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
道傍に並ぶ柱燈人造麝香じんぞうじゃこうの広告なりと聞きてはますます嬉しからず。渡頭わたしばに下り立ちて船に上る。千住せんじゅよりの小蒸気けたゝましき笛ならして過ぐれば余波ふなばたをあおる事少時。
半日ある記 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
神田大火の噂——駿河台も焼けたという話——などを小耳にはさんで、不安らしい色を浮かべていた虚無僧も一番あとから渡舟場わたしばを上がってきた。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
されど急流きふりう岩にげきして水勢すゐせい絶急はげしきところは雪もつもる事あたはず、浪を見る処もあり。渡口わたしばなどはをのにて氷をくだきてわたせども、つひにはこほりあつくなりて力およびがたく、船はをかりて人々氷の上をわたる。
問屋場は打出ヶ浜の渡口場わたしばに近かった。船着きから上がる者、乗る者、ここは旅人のたむろなので、草鞋わらじをひさぐ店もあるし、旅のあかを落したり髪を整える備えもある。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みのるは白木蓮の花を持つて、吾妻橋の渡船塲わたしばから船に乘つた。船が岸を離れた時のゆるやかな心のすべりの感じと一所にみのるの胸には六七年前の追懷の影が射してゐた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)