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ふるゐど
件の
古井戸は、
先住の
家の
妻ものに
狂ふことありて
其處に
空しくなりぬとぞ。
朽ちたる
蓋犇々として
大いなる
石のおもしを
置いたり。
さうして
黄昏時におつぎはそれを
草刈籠へ
入れて
後の
竹藪の
中の
古井戸へ
投げ
落した。
古井戸は
暗くして
且深い。
蚊遣の
煙古井戸のあたりを
籠むる、
友の
家の
縁端に
罷來て、
地切の
強煙草を
吹かす
植木屋は、
年久しく
此の
森に
住めりとて、
初冬にもなれば、
汽車の
音の
轟く
絶間、
凩の
吹きやむトタン
釣臺は、しつかり
蓋をした、
大な
古井戸の
側を
通つて
居ました。