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にうじやく
人の
女房にだけはならずに
居て
下されと
異見を
言はれしが、
悲しきは
女子の
身の
寸燐の
箱はりして
一人口過しがたく、さりとて
人の
臺處を
這ふも
柔弱の
身體なれば
勤めがたくて
もと
富家に
人となりて
柔弱にのみ
育ちし
身は
是れと
覺えし
藝もなく
手に
十露盤は
取りならへど
物に
當りし
事なければ
時の
用には
立ちもせず
坐して
喰へば
空しくなる
山高帽子半靴と
明日かざりし
身の
廻りも
一つ
賣り
二つ
賣りはては
晦日の
勘定さへ
胸につかふる
程にもなりぬ。