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てうばう
小山と小山との間に一道の
渓流、それを渡り終つて、猶其前に聳えて居る小さい
嶺を登つて行くと、段々
四面の
眺望がひろくなつて
いつも両側の
汚れた
瓦屋根に
四方の
眺望を
遮られた地面の低い
場末の
横町から、
今突然、橋の上に出て見た四月の
隅田川は
二十の
春を
夢と
暮らして、
落花の
夕べに
何ごとを
思ひつきてか、
令孃は
別莊住居したき
願ひ、
鎌倉の
何處とやらに、
眺望を
撰んで
去年買はれしが、
話しのみにて
未だ
見ぬも
床かしく
川向は日の光の強い
為に
立続く
人家の
瓦屋根をはじめ一帯の
眺望がいかにも
汚らしく見え、風に追ひやられた雲の列が
盛に
煤煙を
吐く
製造場の
烟筒よりも
遥に低く、動かずに層をなして
浮んでゐる。