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ちじょう
後世地上に
来るべき
善美なる
生活のこと、
自分をして一
分毎にも
圧制者の
残忍、
愚鈍を
憤らしむる
所の、
窓の
鉄格子のことなどである。
先棒と
後との
声は、
正に一
緒であった。
駕籠が
地上におろされると
同時に、
池に
面した
右手の
垂は、
颯とばかりにはね
揚げられた。
「落着きなさい。……
痴情の
業のするところだ、
醒めた後では、己れの心が、己れでもわからないほど、
呆っ
気ないものになってくる」
一面から
云えば氏はあまり女性に
哀惜を感ぜず、男女間の
痴情をひどく
面倒がることに
於て、まったく
珍らしい
程の性格だと云えましょう。