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せんめんじよ
ドカリ——
洗面所の
方なる、
扉へ
立つた、
茶色な
顔が、ひよいと
立留つてぐいと
見込むと、
茶の
外套で
恁う、
肩を
斜に
寄つたと
思ふと
その
中はまだよかつた、……
汽車は
夜とともに
更けて
行き、
夜は
汽車とゝもに
沈むのに、
少時すると、また
洗面所の
扉から、ひよいと
顔を
出して
覗いた
列車ボーイが、やがて
其の
臭さと
云つては、
昇降口の
其方の
端から、
洗面所を
盾にした、いま
此方の
端まで、むツと
鼻を
衝いて
臭つて
來る。
番町が、
又大袈裟な、と
第一近所で
笑ふだらうが、いや、
眞個だと
思つて
下さい。
いかゞぢや、それで
居て、
二階で、
臺所一切つき、
洗面所も……