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しようかい
著者は
少年諸君に
向つて、
地震學の
進んだ
知識を
紹介しようとするものでない。
又たとひ
卑近な
部分でも、
震災防止の
目的に
直接關係のないものまで
論じようとするのでもない。
開卷第一に、
孤獨幽棲の
一少年を
紹介し、その
冷笑と
其怯懦を
寫し、
更に
進んで
其昏迷を
描く。
襤褸を
纏ひたる
一大學生、
大道ひろしと
歩るきながら
知友の
手前を
逃げ
隱れする
段を
示す。
我は
自ら面の
灼くが如く目の血走りたるを覺えて、
巾を
鹹水に
漬して額の上に加へ、又水を
渡り來る
汐風の
些しをも失はじと、衣の
鈕を
鬆開せり。されど到る處皆火なるを
奈何せん。