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くわはう
さても
好みの
斯くまでに
上手なるか、
但しは
此人の
身に
添ひし
果報か、
銀の
平打一つに
鴇色ぶさの
根掛むすびしを、
優にうつくしく
似合ひ
給へりと
見れば、
束髮さしの
花一輪も
中々に
愛らしく
時に後ろの方に當り
生者必滅會者定離嗚呼皆是
前世の
因縁果報南無阿彌陀佛と唱ふる聲に安五郎は
振返り見れば
墨染の衣に
木綿の
頭巾を
これが
所夫と
仰がれぬべく
定まりたるは
天下の
果報の
一人じめ
前生の
功徳いか
許り
積みたるにかと
世にも
人にも
羨まるゝはさしなみの
隣町に
同商中の
老舖と
知られし
松澤儀右衞門が
一人息子に
芳之助と
呼ばるゝ
優男