“くちなし”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
梔子44.9%
山梔26.5%
山梔子16.3%
4.1%
口無2.0%
山梔木2.0%
2.0%
桅子2.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
次兄にその名称を訊くと、梔子くちなしだといつた。さういへば子供の頃から見なれた花だが、ひつそりとした姿が今はたまらなく懐しかつた。……
壊滅の序曲 (新字旧仮名) / 原民喜(著)
真偽の分からぬ肉筆の浮世絵の軸物を掛けて、一輪挿いちりんざし山梔くちなしの花を活けた床の間を背にして座を占めた末造は、鋭い目であたりを見廻した。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
けた少時しばし竹藪たけやぶとほしてしめつたつちけて、それから井戸ゐどかこんだ井桁ゐげたのぞんで陰氣いんきしげつた山梔子くちなしはな際立はきだつてしろくした。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
宗右衛門もふと奥庭の奥深くへ眼をやつた。白無垢しろむくのお小夜とお里が、今、花のまばらなくちなしの陰から出てつはぶきに取り囲まれた筑波井つくばいの側に立ち現はれたところである。
老主の一時期 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
以て申立て終に死人に口無くちなしたとへの通り彼札の辻の人殺しは道十郎に事きはまり殘骸は取捨に相成家財かざいは妻子に下し置れ店請たなうけ人なる赤坂の六右衞門方へ妻子の者は泣々なく/\引取れ長庵は何の御とがめもなく落着らくちやくせしかばこゝに於て三州藤川在岩井村へは此由を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それはマン丸く茂った山梔木くちなしの根方の、ちょっと人眼に附きにくい処に、極めて自然な位置に投出されている相当大きな天草砥石であった。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
楡とくちなしを植えたのは、火災を封じたものらしい。向き合った一棟が朱雀造りで、梅と棗を植えたのは、盗賊避けから来たものらしい。
天主閣の音 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
もの甘きはな桅子くちなしくゆりしてふりもそそげば
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)