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いひまぎ
無論長吉は
何とでも
容易く
云紛らすことは
出来ると思ふものゝ、
其れだけの
嘘をつく良心の苦痛に
逢ふのが
厭でならない。
はら/\と流し
這は
情けなき
御心哉假令何と
云紛らさるゝとも朝歸りは知れてある未だ御身持を
直し給はぬか今の我が身が
辛いとて御
異見申では御座りませぬ
皆御身の爲なれば少しは以前の御難儀を
せざればとて
此方に於て如何共
爲術なく樣子も
分らざれば若や
病死にても致されしや
假令夫にしてもお
蔦殿お菊共
約束あり
此方の得意まで
任せ置し者なれば
是非とも
迎ひは參るべし深く
案事られ
病氣にても
出ぬやうなし給へと
云紛らせども母は我が子の
窶然き
形容を
ば言ひ出してひよな
騷ぎに成たりと酒も
何處へか
醒て
行色も
戀路も
消果てこはそも如何にと
惘れ果十方に暮て居たりしが忠兵衞は
迯もされねば
是待給へお光殿御番所へ
駈込でも
外事成ぬ大事の一
條人の命に關る事先々
篤と
勘考てと
言紛らすを