よそほ)” の例文
よそほひ諸司代屋敷へおもむきしかば牧野丹波守殿對面たいめん有て身分より御證據しようこの品の拜見もありしに全く相違なしと見屆みとゞけ京都よりも又此段を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
勘次かんじはおつたの姿すがたをちらりと垣根かきね入口いりぐちとき不快ふくわいしがめてらぬ容子ようすよそほひながら只管ひたすら蕎麥そばからちからそゝいだのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
りながら外面おもて窮乏きうばふよそほひ、嚢中なうちうかへつあたゝかなる連中れんぢうには、あたまからこの一藝いちげいえんじて、其家そこ女房にようばう娘等むすめらいろへんずるにあらざれば、けつしてむることなし。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
打ちくつろいだ丹之丞の前には、久し振りの愛妾お勝が精一杯のよそほひを凝らして、旅の疲れ休めの盃を進めて居ります。
一寸知つた程度の人が、五人ゐはしたが、その中の四人はIの尊敬者であり、一人は、朴直なよそほひをした通人で、愚直な私など相手にして呉れるべくもなかつた。
我が生活 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
そこらの野山を色とりどりに晴れやかによそほつた春の眺めは、あのがらんとした空洞のやうな空の広みと比べて、どんなにこの仙術修業者の心を後に引き戻したらうか。
春の賦 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
糸織の衿懸えりかけたる小袖こそで納戸なんど小紋の縮緬の羽織着て、七糸しつちん黒繻子くろじゆすとの昼夜帯して、華美はでなるシオウルを携へ、髪など撫付なでつけしとおぼしく、おもても見違ふやうに軽くよそほひて
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
江戸に正月せし人のはなしに、市中にて見上るばかり松竹をかざりたるもとに、うつくしよそほひたる娘たちいろどりたる羽子板はごいたを持てならび立て羽子をつくさま、いかにも大江戸の春なりとぞ。
ればよなとおもひながら、殊更ことさららずがほよそほひつゝ、主人あるじ御婦人ごふじんなるにや、さて何某殿なにがしどの未亡人びばうじんとか、さらずはおもひものなんどいふひとか、べつしてあたへられたる邸宅ていたくかとへば
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かくはかなき身と生れても、流石さすがよそほひ飾る心をば持ちたるにや、髮平かに結ひ上げて、一束の菫花すみれを揷せるが、額の上に垂れ掛れり。われそのかたちを窺ふに、羞慙しうざんあり、慧巧けいかうあり。
己はレオネルロが只此土地を離れようとしてゐて、口実を設けるのだと悟つたが、それを色にあらはさずに、其表面の理由を信ずるやうによそほつた。己は実にヱネチアの生活が厭になつてゐた。
復讐 (新字旧仮名) / アンリ・ド・レニエ(著)
巡査じゆんさや、憲兵けんぺいひでもするとわざ平氣へいきよそほふとして、微笑びせうしてたり、口笛くちぶえいてたりする。如何いかなるばんでもかれ拘引こういんされるのをかまへてゐぬときとてはい。れがため終夜よつぴてねむられぬ。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
夜の明方に、白粉おしろいよそほつた、綺麗な首が接ぎ目からころりと落ちた。
クサンチス (新字旧仮名) / アルベール・サマン(著)
よそほかざりたるわれら三人さんにん……
カンタタ (旧字旧仮名) / ポール・クローデル(著)
女房にようばう彼等かれらにはときまで私語さゞめうたおもかげがちつともなかつた。彼等かれらあわてゝ寶引絲はうびきいとふところかくしてらぬ容子ようすよそほうて圍爐裏ゐろりそばあつまつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
立出で行列ぎやうれつ以前よりも華美くわびよそほひて藤井左京赤川大膳だいぜん供頭ともがしらとなりて來る程に途中とちうの横町々々は大戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
込合へる人々のおもては皆赤うなりて、白粉おしろい薄剥うすはげたるあり、髪のほつれたるあり、きぬ乱次しどな着頽きくづれたるあり。女はよそほひ飾りたれば、取乱したるがことに著るく見ゆるなり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
江戸に正月せし人のはなしに、市中にて見上るばかり松竹をかざりたるもとに、うつくしよそほひたる娘たちいろどりたる羽子板はごいたを持てならび立て羽子をつくさま、いかにも大江戸の春なりとぞ。
とき恥辱はぢ恐怖おそれとによわきもののこゑをも得立えたてず、いたみ、かなしみ、けるかたちよそほはざるに愁眉しうび泣粧きふしやう柳腰りうえうむちくじけては折要歩せつえうほくるしみ、金釵きんさいしては墮馬髻だばきつ顯實けんじつす。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
しいをんな服粧みなりるいなど哄然どつわるはれる、おもへば綿銘仙めんめいせんいとりしにいろめたるむらさきめりんすのはゞせまおび、八ゑんどりの等外とうぐわいつまとしてはれより以上いじやうよそほはるべきならねども
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
村落むらもの段々だん/\器量きりやう相當さうたう晴衣はれぎ神社じんじやまへあつまつた。つのは猶且やつぱりをんなで、疎末そまつ手織木綿ておりもめんであつてもメリンスのおび前垂まへだれとが彼等かれらを十ぶんよそほうてる。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
司馬相如しばさうじよつま卓文君たくぶんくんは、まゆゑがきてみどりなることあたか遠山とほやまかすめるごとし、づけて遠山ゑんざんまゆふ。武帝ぶてい宮人きうじんまゆ調とゝのふるに青黛せいたいつてす、いづれもよそほふに不可ふかとせず。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
よそほひ道中とゞこほりなく十一日晝過に京都四條通りの旅館へぞちやくなせり則ち大坂の如くに入口玄關へはむらさ縮緬ちりめんあふひもんの幕を張渡はりわたし門前へは大きなる表札へうさつを立置ける錢屋ぜにや四郎右衞門は是を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
江戸の鳥追とりおひといふは非人ひにん婦女ふぢよ音曲おんきよくするを女太夫とて木綿もめん衣服いふくをうつくしくなし、かほよそほひ、編笠あみがさをかむり、三弦さみせん胡弓こきうなどをあはせ、賀唱めでたきうたをおもしろくうたひ、門々かど/\に立て銭をふ。
こめつ可笑をかしく面白おもしろものがたりながらしづみがちなるしゆ心根こゝろねいぢらしくも氣遣きづかはしくはなれぬまもりにこれもひとつの關所せきしよなり如何いかにしてかえらるべき如何いかにしてかのがるべきおたかかみとりあげず化粧けしやうもせずよそほひしむかし紅白粉べにおしろい
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
さかうへから、はるか小石川こいしかは高臺たかだい傳通院でんづうゐんあたりから、金剛寺坂上こんがうじざかうへ目白めじろけてまだあまはひらない樹木じゆもく鬱然うつぜんとしたそこ江戸川えどがは水氣すゐきびてうすよそほつたのがながめられる。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
江戸の鳥追とりおひといふは非人ひにん婦女ふぢよ音曲おんきよくするを女太夫とて木綿もめん衣服いふくをうつくしくなし、かほよそほひ、編笠あみがさをかむり、三弦さみせん胡弓こきうなどをあはせ、賀唱めでたきうたをおもしろくうたひ、門々かど/\に立て銭をふ。
まへさまお一人ひとりのおわづらひはお兩人ふたりのおなやみと婢女共をんなどもわらはれてうれしときしが今更いまさらおもへばことさらにはせしかれたものならず此頃このごろしは錦野にしきの玄關げんくわんさきうつくしくよそほふたくらべてれよりことばけられねど無言むごん行過ゆきすぎるとは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
女子ぢよしよそほはばむしかくごときをもつ會心くわいしんこととせん。美顏術びがんじゆついたりては抑々そも/\末也すゑなり
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)