黒山くろやま)” の例文
そこには、おおきな呉服屋ごふくやがありました。たり、はいったりする人々ひとびとで、そこのかどは、黒山くろやまのようにぎわっていました。
灰色の姉と桃色の妹 (新字新仮名) / 小川未明(著)
米国人の歓迎祝砲海上つつがなく桑港サンフランシスコに着た。着くやいなや土地の重立おもだったる人々は船まで来て祝意をひょうし、これを歓迎の始めとして、陸上の見物人は黒山くろやまの如し。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
いっぽう、宿屋やどやのまえは、ものめずらしげにあつまってきた村の人びとで、黒山くろやまの人だかりになっている。
「矢っ張り場所がわるいんだ」と野々宮がいふ。男は二人ふたりで笑つた。団子坂のうへると、交番の前へ人が黒山くろやまの様にたかつてゐる。迷子まひごはとう/\巡査の手に渡つたのである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
赤蛙あかがえるが化けたわ、化けたわと、親仁おやじ呵々からからと笑ったですが、もう耳も聞えず真暗三宝まっくらさんぼう。何か黒山くろやまのような物に打付ぶッつかって、斛斗もんどりを打って仰様のけざまに転ぶと、滝のような雨の中に、ひひんと馬のいななく声。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
黄山きやま赤山あかやま黒山くろやま
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
そのも、二人ふたりのまわりには、いつものごとく、ひと黒山くろやまのようにあつまっていました。
港に着いた黒んぼ (新字新仮名) / 小川未明(著)
四っ角近くへると左右に本屋と雑誌屋が沢山ある。そのうちの二三軒には人が黒山くろやまの様にたかつてゐる。さうして雑誌を読んでゐる。さうして買はずに行つて仕舞ふ。野々宮君は
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
少年しょうねんは、ちゅうちょしましたが、ついに、灰色はいいろくものせわしそうに、あたまうえはし野原のはらをひととびにはしって、まちへいきました。さすがに、りょうがわに、ひと黒山くろやまのごとくあつまっています。
(新字新仮名) / 小川未明(著)