鶏鳴けいめい)” の例文
これさえホホ笑ましくお聞きあるのか、御簾ぎょれんのあたりのお叱りもない。そして鶏鳴けいめい早くも、いよいよ都入りのおしたくに忙しかった。
鶏鳴けいめい暁を報ずる時、夜のさまが東雲しののめにうつり行くさまは、いつもこれに変らぬのであるけれども、月さえややてらめたほどの宵の内に何事ぞ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……以前のあのうち羽振はぶ鶏鳴けいめいの勢いは皆無だ。剣刀つるぎたち身にうる丈夫ますらお面影おもかげは全くなくなってしまった。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
原文に鶏鳴露アカトキツユとあるが、鶏鳴けいめい(四更丑刻うしのこく)は午前二時から四時迄であり、また万葉に五更露爾アカトキツユニ(巻十・二二一三)ともあって、五更ごこう寅刻とらのこく)は午前四時から六時迄であるから
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
祈祷の言葉はいつのまにか、彼のくちびるから消えてしまった。今度は突然祭壇のあたりに、けたたましい鶏鳴けいめいが聞えたのだった。オルガンティノは不審そうに、彼の周囲を眺めまわした。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
アンナスの前から下げられたイエスを、番卒どもは嘲弄ちょうろうし、これを打ち、その目をおおうて、「預言せよ、汝を打ちし者は誰なるか」と言ってそしった。時刻は鶏鳴けいめいの刻、すなわち午前三時ごろであった。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
『いや、鶏鳴けいめいや、犬声は、却って霊感のはやいものだ。たとえば雉子きじの啼き声で、地震が予知されるという事実もあるように』
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
満座は腹を抱えて笑い、さらに杯盤はいばんを新たにして、男と男の心胆をそそぎ合う酒幾。やがて鶏鳴けいめいまで聞いてしまった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朝のま、薄雲ひくく閉じて明けなやむかの如し、とあるなどは京洛の春のつねで、盆地の朝霞あさがすみが、鶏鳴けいめいとなってもなかなか朝光を空に見せずにいたものだろう。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いつか、鶏鳴けいめいが遠くに聞えていた。ふたりは、ほんのつかのま眠っただけだった。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あんじょう、慾心の修羅場しゅらばはなかなかやまなかった。鶏鳴けいめいを知らず、が照りだしたのを知らず、とうとう明日あしたになっても、蝋燭ろうそくを継いでそこだけの夜を守り、いよいよ悪戯わるさがたけなわになる。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
路に錦江きんこうの嶮をひかえ、地勢は剣閣けんかく万峰ばんぽうに囲まれ、周囲二百八程、縦横三万余里、鶏鳴けいめい狗吠くはい白日も聞え、市井点綴しせいてんてつ、土はよく肥え、地は茂り、水旱すいかんの心配は少なく、国富み、民栄え、家に管絃あり
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
もう外には鶏鳴けいめいが聞えた。
遠く、鶏鳴けいめいが聞えた。
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鶏鳴けいめい
三国志:05 臣道の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)