鱗形うろこがた)” の例文
もう少し涼しくなると、彼女は鱗形うろこがたの銀紙を貼り付けたあかい振袖を着て、芝居で見る清姫きよひめのような姿になって、舞台で蛇を使うことがある。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
鱗形うろこがたあかのついた身体全体は、まるで松の幹が転がっているようだった。胸は、肋骨ろっこつが一つ一つムキ出しに出ていた。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
緑いろの革で四角に出来てゐて、ふち蝶番てふつがひの処とは勿論、四隅よすみに附いてゐる鱗形うろこがたの装飾も、表の真中に附いてゐる名の頭字の A の字も、皆銀である。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
葉子は何か意気な縞柄しまがらのお召の中古ちゅうぶるの羽織に、鈍い青緑とくろい紫との鱗形うろこがたの銘仙の不断着で、いつもりゅうッとした身装みなりを崩さない、いなせなオールバック頭の
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
鯉七こいしち。鯉の精。夕顔の蔭より、するするとあらわる。黒白鱗こくびゃくうろこ帷子かたびら、同じ鱗形うろこがた裁着たッつけひれのごときひらひら足袋。くだんの竹の小笠に、おもておおいながら来り、はたとその小笠をなげうつ。
夜叉ヶ池 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お節は勝手の草履ざうりを穿いたまゝ其小窓のところへ行つた。無花果いちじくの枝、うるしの葉、裏長屋の屋根などが雑然ごちや/\入組んで見える町裏を通して朝らしい光を帯びた鱗形うろこがたの雲が望まれた。
出発 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
それはよく整い、よく接合し、鱗形うろこがたに並び、直線をなし、均斉きんせいを保ち、しかも凄惨せいさんな趣があった。学理と暗黒とがこもっていた。防寨ぼうさいの首領は、幾何学者かもしくは幽鬼かと思われた。
単衣の裾を固く合せると、鱗形うろこがたの帯の端をギュッと引絞ります。
小蒲団に大蛇をろちの恨み鱗形うろこがた 桃青
芭蕉雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
鱗形うろこがたほりをした黄楊つげの箱から
うじは細木、定紋はひいらぎであるが、店の暖簾のれんには一文字の下に三角の鱗形うろこがたを染めさせるので、一鱗堂いちりんどうと号し、書を作るときは竜池りゅうちと署し、俳句を吟じては仙塢せんうと云い
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)