高低こうてい)” の例文
所どころ高低こうていはあっても、日のとどくかぎり野原であった。畑地はたちもなければ森もない、遠方から見るとただ一色のねずみ色の土地であった。
かういふふうに、土地とち高低こうてい位置いち相違そういによつて、さむあたゝかさがちがふにつれて、える樹木じゆもくもそれ/″\ちがふのです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
伝吉は短い沈黙のあいだにいろいろの感情のむらがるのを感じた。嫌悪けんお憐憫れんびん侮蔑ぶべつ、恐怖、——そう云う感情の高低こうていいたずらに彼の太刀先たちさきにぶらせる役に立つばかりだった。
伝吉の敵打ち (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
庭の内に高低こうてい参差しんしとした十数本の松は、何れもしのび得るかぎり雪にわんで、最早はらおうか今払おうかと思いがおに枝を揺々ゆらゆらさして居る。素裸すっぱだかになってた落葉木らくようぼくは、従順すなおに雪の積るに任せて居る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
道義心と利害心が高低こうていを描いて彼の心を上下うえしたへ動かした。するとその片方に温泉行の重みが急に加わった。約束を断行する事は吉川夫人に対する彼の義務であった。必然から起る彼の要求でもあった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
山麓さんろくから頂上ちようじようまでのあひだにいろ/\模樣もようかはつたいくつかの森林帶しんりんたいがかさなつてゐるわけです このように土地とち高低こうていによつてあらはれる森林帶しんりんたいのことを『垂直的森林帶すいちよくてきしんりんたい
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)