骰子さいころ)” の例文
骰子さいころだのルーレットだのトランプだの将棋だのドミノだのいうものは、そんな目的のために猶太ユダヤ人が考え出して世界中に教え拡めたものである。
悪魔祈祷書 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
賭博の興味は、その氣まぐれな運をひいて、偶然の骰子さいころをふることから、必然の決定されてる結果を、虚數の上に賭け試みることの冒險にある。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
マンは、手綱たづなをにぎって、一散に、街の方に、馬を飛ばした。蹴散らされる雪といっしょに、花札や、骰子さいころが弾ねとんだ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
地球上の諸国民は、そのいずれが飢餓に服すべきかを決定するために骰子さいころを投ずるようには命ぜられてはいない。世界には常に豊富な食物がある。
第十七世紀の半ば頃、この骰子さいころをもって一の疑獄が解決せられたという歴史附の有名な陳列品である。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
「でも、もしわたしが海を渡って行くことに前からきまってるんなら、天の神さまがわたしが島国しまぐにに生れて来るように骰子さいころをお投げになるとあんたは思いますか?」
可笑をかしいのは賭博ばくちが好きだつたからといつて、墓石はかいし骰子さいころの目まで盛つたのがあつた事だ。それを考へてせがれの右団次も亡父おやぢの墓を幽霊の姿にでも刻んだら面白からう。
事実、この流行力が存続する限り損失者は殆んど例外で、十姉妹はインチキ骰子さいころ同様だった。
十姉妹 (新字新仮名) / 山本勝治(著)
骰子さいころは投げられました。僕は、もし破滅に陥らなければ帰るということに同意しました。
そのうちに夜が明けたので、慌てて骰子さいころだけは川へ投げ込んだが、盤の石は重いので其場に棄てられたまま未だに残っている、賽が淵は即ちさいころの投げられた所であるという。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
しかし家庭の運転手は労働を労働と認めていない。車掌役の山下さんにしても同じことだ。早くから子供に縛られて、ついぞ一度大胆な骰子さいころを投げる決心がつかないでしまった。
嫁取婿取 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
人生の明暗喜怒哀楽をのせて転々ところぶ人生双六の骰子さいころはかくて感激にふるえる両君の手で振られて、両君は西と東に別れて、それぞれの人生航路に旅立とうと誓ったのである
アド・バルーン (新字新仮名) / 織田作之助(著)
いままで僕は遠くの方に對岸のやうなものを認め、そしてそこに數箇の骰子さいころのやうな洋館が塊つてゐるやうに思つてゐたが、それは見る見るうちに船のマストの方へ昇つていつた。
風景 (旧字旧仮名) / 堀辰雄(著)
おごれる女神は、たえずこうささやきながら、その、古ぼけた、巨大な骰子さいころを愛撫している。
二十歳のエチュード (新字新仮名) / 原口統三(著)
性格の形成に関するゴドウィン氏自身の見解によれば、かかる事情の下において万人が有徳の君子たりそうもないことは、骰子さいころを百度投じて六が百度出そうもないのと確かに同様である。
多治見ノ四郎二郎国長であり、禿かむろ二、三人を相手にして、双六すごろく骰子さいころを振っているのは土岐十郎頼兼よりかねであり、茶筌頭ちゃせんあたま烏帽子えぼしかぶらず、胸もとをはだけて汗をかき、なお大盃をあおっているのは
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その中へ骰子さいころを二ついれて、帽子を揺り動かしては中の骰子をころがして二つの骰子の表へ出た数の和を記していき、それを記したノートブックが欧州旅行中に十数冊もたまったということである。
黒岩涙香のこと (新字新仮名) / 平林初之輔(著)
意志の力と自由によつて、宇宙が自分に都合よく、プロバビリチイの骰子さいころの目が、思ひ通りに出ることを信じてゐる。
宿命 (旧字旧仮名) / 萩原朔太郎(著)
両端に、一個ずつめこまれた大きな骰子さいころには、どちらも、六の目が正面に出ている。上部には、「おでん・すし・割烹かっぽう」。角助を殺した松川源十の店だ。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
そのうちに盆茣蓙の真中に伏せてあった骰子さいころ壺が引っくり返ると、和尚の負けになったらしく、積上げられた寺銭が、大勢の笑い声のうちにザラザラと崩れて行く。
名娼満月 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
二人はそのせなまたぐと、いきなり洋袴ズボンの隠しから骰子さいころを掴み出した。そして
骰子さいころの目が、一を出して、目紙の上に、ころがっている。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
二六 死の骰子さいころ
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
男は、右手で、骰子さいころを投げる恰好をした。しかし、金五郎は、その意味がわからなかった。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ちやうど金持を見つけて賭博打ばくちうち骰子さいころを持つて又珈琲屋カフエーへ出掛けてくやうに。