馬爪ばづ)” の例文
その暗謨尼亜を造るには如何どうするかと云えば、こつ……骨よりもっと世話なしに出来るのは鼈甲屋べっこうやなどに馬爪ばづ削屑けずりくずがいくらもあって只呉ただくれる。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「王子よ、我の酒盞うくはを爾は受けよ。」と、兵部の宿禰は傍からいって、馬爪ばづで作った酒盞を長羅の方へ差し延べた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「マガイ」とは馬爪ばづ鼈甲べっこうに似たらしめたるにて、現今の護謨ゴム象牙ぞうげせると同じく似て非なるものなれば、これを以て妾を呼びしことの如何いかばかり名言なりしかを知るべし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
馬爪ばづのさしぐしにあるひと本甲ほんかうほどにはうれしがりしものなれども、人毎ひとごとめそやして、これほどの容貌きりよううもとはあたら惜しいもの、ひとあらうならおそらく島原しまばらつての美人びじん
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
馬爪ばづ、あんな骨類こつるいを徳利に入れて蒸焼むしやきにするのであるから実に鼻持はなもちもならぬ。それを緒方の塾の庭の狭い処でるのであるから奥でもったまらぬ。奥で堪らぬばかりではない。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)