顔付かほつき)” の例文
旧字:顏付
代助の巻烟草まきたばこつた手がすこふるへた。梅子は寧ろ表情をうしなつた顔付かほつきをして、謝絶の言葉を聞いた。代助は相手の様子に頓着なく進行した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ヱヴェレストくらゐがなんだといふ顔付かほつきで、みんな馬鹿ばかにしたやうにつばをやたらにくのだつた。
火を喰つた鴉 (新字旧仮名) / 逸見猶吉(著)
彼はむつかしい顔付かほつきをして、手下の男といつしよに出て行きました。
金の猫の鬼 (新字旧仮名) / 豊島与志雄(著)
「その金をくなしたんだから済まない」と与次郎が云つてゐる。実際まない様な顔付かほつきでもある。何所どこおとしたんだと聞くと、なにおとしたんぢやない。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
何故なぜ」とよし子のあには妹を見た。たしなめる程に強い言葉でもなかつた。野々宮の顔付かほつきは寧ろ冷静である。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
顔付かほつきと云ひ、眼付めつきと云ひ、声のひくそここもちからと云ひ、此所こゝ迄押しせまつてた前後の関係と云ひ、凡ての点から云つて、梅子をはつと思はせない訳に行かなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
御母おつかさん、それぢや御父おとつさんにまないぢやありませんかと云ひさうな所で、急にアポロ抔を引合にして、呑気につて仕舞ふ。それでゐて顔付かほつき親子おやことも泣きしさうである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
代助のちゝには一人ひとりあにがあつた。直記なほきと云つて、ちゝとはたつた一つ違ひの年上としうへだが、ちゝよりは小柄こがらなうへに、顔付かほつき眼鼻立めはなだちが非常にてゐたものだから、知らない人には往々双子ふたごと間違へられた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)