雁来紅がんらいこう)” の例文
旧字:雁來紅
今年ははぎの花がおそく、すすきはしげっているのに、雁来紅がんらいこうは色あざやかだがばかに短く細くて、雁来紅本来のあの雄大な立派さがない。
雁来紅がんらいこうの葉を食むものは紅髯こうぜん毿々さんさんとして獅子頭の如し。山茶花さざんかを荒すものは軍勢の整列するが如く葉裏に密生し其毛風に従って吹散ふきさんじ人を害す。園丁えんていも亦恐れて近づかず。
偏奇館漫録 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
宿り木、かづらなどにてすくなくも一木ひとぎ五色ごしきの花附けぬはなくさふらへば、実れる木も多く、葉の紅葉もみぢはた雁来紅がんらいこうの色したる棕櫚しゆろに似たる木など目もあやに夕闇に浮び申しさふらひき。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
四日の大暴風雨の後なので、荒れ、まだ紫苑しおんなども咲かないので大してよくはなかったがお成の間の上からの眺望一寸よかった。雁来紅がんらいこう、はちす、黄蜀葵、百日紅さるすべり、水引、その他。
木々の葉は半ば枯れ落ちて、空は雁来紅がんらいこうの花のように青かった。クリストフはうっとりと夢想にふけった。その夢想はすぐに、十月のもやから落ちてくる柔らかい光の色に染められた。
ジニアの花、雁来紅がんらいこうの葉の匂ひ亦、疲れたる漁史を慰むるやに思はれし。
釣好隠居の懺悔 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
まず引越しをして来ると、庭の雑草をむしり、垣根をとり払って鳳仙花ほうせんか雁来紅がんらいこうなどを植えた。庭が川でつきてしまうところに大きなえのきがあるので、その下が薄い日蔭になりなかなか趣があった。
落合町山川記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
養はるる寺の庫裏くりなる雁来紅がんらいこう輪袈裟わげさは掛けでとりおはましを
恋衣 (新字旧仮名) / 山川登美子増田雅子与謝野晶子(著)
狭い澄んだ額のまわりにさざなみのように揺らいでる細やかな髪の毛、やや重たげな眼瞼まぶたの上のすっきりしたまゆ雁来紅がんらいこうの青みをもった眼、小鼻のぴくぴくしてる繊細な鼻、軽くへこみを帯びた顳顬こめかみ