すず)” の例文
馬車や自働車ののくるめき、電車のすず——銀座の二丁目から三丁目にかけていつも見馴れた浅はかな喧騒の市街が今はぼかされ掻き消されて
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
つちに砕けた飴の鳥の鶯には、どこかの手飼の、の首玉した小猫が、ちろちろとすずを鳴らしてからんで転戯じゃれる……
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人の足音や話声や、すずおとや、相図の笛が聞えるだけである。最初は女に新聞を読ませて聞いたが、声がれて来たのでめさせた。二人とも都の住いへ帰るのが嬉しかった。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
停車場からすずの音が、ぴんぱんぴんぱんと云うように聞える。丁度時計のセコンドのようである。セコンドや時間がどうなろうと、そんな事は、もうこの二人には用が無いのである。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)
きさまとても、少しは分つてらう。分つて居て、其の主人が旅行と云ふ隙間すきまねらふ。わざと安心して大胆な不埒ふらちを働く。うむ、耳をおおうてすずを盗むと云ふのぢや。
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
最後のすずが鳴るまで、医学士が汽車の踏板に足を掛けて、マリイと雑談をしていた。
みれん (新字新仮名) / アルツール・シュニッツレル(著)
御仏みほとけのりの護りと、ことよさし築かしし殿、星月夜ほしづくよ夜空のくまも、御庇みひさしのいや高々に、すずのいやさやさやに、いなのめの光ちかしと、横雲のさわたる雲を、ほのぼのと聳えしづもる。
(新字旧仮名) / 北原白秋(著)
汝とても、少しは分っておろう。分っていて、その主人が旅行という隙間すきまを狙う。わざと安心して大胆な不埒ふらちを働く。うむ、耳をおおうてすずを盗むというのじゃ。
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御仏ののりの護りと、ことよさし築かしし殿、星月夜夜ぞらのくまも、御庇みひさしのいや高だかに、すずの音のいやさやさやに、いなのめの光ちかしと、横雲のさわたる雲を、ほのぼのと聳えしづもる。
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
あのそのうすものを透くと聞きましただけでも美しさが思いられる。寝てから膚を見たは慄然ぞっとする……もう目前めさきへちらつく、ひとりの時ならすずを振って怨敵退散おんてきたいさんと念ずる処じゃ。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すず鳴らす路加ルカ病院のおそざくら春も今しかをはりなるらむ
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
すなわち取って、帽子をはずして、襟にかける、と先達の手にすずが鳴った。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すず鳴らす路加ルカ病院のおそざくら春もいましかをはりなるらむ
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
……すがすがしいが、心細い、可哀あわれな、しかし可懐なつかしい、胸を絞るような駅路うまやじすずの音が、りんりんと響いたので、胸がげっそりと窪んで目が覚めるとね、身体が溶けるような涙が出たんだ。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
月の夜をしきり傾くすずのかげ友は見しちふ我は聴きつも
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
と、蜩の声ばかりでなく、あらたすずが起ったのである。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
観音の春はあけぼの紫の甍の反りの隅ずみのすず
海阪 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
徳利嘗め、けろりすずふる
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
揺りいづるすずのかずの
海豹と雲 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)