鋩子ぼうし)” の例文
正宗相伝の銀河にまが大湾おおのだれに、火焔鋩子ぼうしの返りが切先きっさき長く垂れて水気みずけしたたるよう……中心なかごに「建武五年。於肥州平戸ひしゅうひらとにおいて作之これをつくる盛広もりひろ
冥土行進曲 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「鍛えは柾目、忠の先細く、鋩子ぼうし詰まってにえおだやか、少し尖った乱れの先、切れそうだな、切れてくれなくては困る」
首頂戴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「一して、風を断てば、剣は啾々しゅうしゅうと泣くのだ。星いて、剣把けんぱから鋩子ぼうしまでを俯仰ふぎょうすれば、朧夜おぼろよの雲とまがう光のは、みな剣の涙として拙者には見える」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
間余けんよの間隔をおいた、ふたりいたずらに鋩子ぼうし先に月の白光を割いて、ふたたび対立静止の状をつづけだした。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
このあたりはもはや二千六百フィートの標高。山毛欅ヘエトルの林の奥のお花畑には羊の群が草をみ、空をきりひらくアルプスの紙ナイフは、白い象牙の鋩子ぼうしを伸べる。光る若葉山杜鵑やまほととぎす
孫次郎は鋩子ぼうしさがり、籠手こてをやや左へ外して右足を浮かす、呼吸を計ってじりりと出た。犬飼研作はようやく相手の腕を知ったらしい。さっと眼色を変えて退る、静かに青眼の剣を上段へすりあげた。
おもかげ抄 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
鎺元はばきもとから鋩子ぼうしさきまでまだらなく真紅に焼いた刀身を、しずかに水のなかへ入れるのだが、ここがたましいめ場所で、この時水ぐあい手かげん一つで刃味も品格も
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
砂地へ半身うずめこんだように身をかがめ、当麻とうま五郎のだんびらを守りがまえの青眼に、二ツのひとみは剣のミネをおもむろにたどって、月光をチカッと射る鋩子ぼうしの先から
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背後うしろ下がりの刻み足で、太刀は中段真の構え、兵馬の眉間へ、鋩子ぼうし先をさしつけ、居つかぬ用意にシタシタと動かし、ジリリ、ジリリ、ジリリ、ジリリと、庭の奥へと下がって行く。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
きらり、きらりと月輪の士の抜き連れるごとに、鋩子ぼうしに、はばき元に、山の陽が白くえた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
と立ち上がッた途端に、どうでしょう、まぎれもない大刀の鋩子ぼうしです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
刹那せつな、冷気が頬をかすめる。かいくぐった文次、縁側へ出た。追いすがる無反むぞりの一刀、切っ先が点となって鶺鴒せきれいの尾みたいに震えながら、鋩子ぼうしは陽を受けて名鏡のようにぴかありぴかりと光る。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
はばきから鋩子ぼうしまで、目づもり三尺ばかりなせき業刀わざもの
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)