遠近ゑんきん)” の例文
こゝに信州しんしう六文錢ろくもんせん世々よゝ英勇えいゆういへなることひとところなり。はじめ武田家たけだけ旗下きかとして武名ぶめい遠近ゑんきんとゞろきしが、勝頼かつより滅亡めつばうのちとし徳川氏とくがはし歸順きじゆんしつ。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天気朦朧もうろうたる事数日すじつにして遠近ゑんきん高山かうざんはくてんじて雪をせしむ。これを里言さとことば嶽廻たけまはりといふ。又うみある所は海鳴うみなり、山ふかき処は山なる、遠雷の如し。これを里言に胴鳴どうなりといふ。
晝夜ちうや差別さべつなく、遠近ゑんきんから參集さんしふする愚男愚女ぐなんぐぢよは、一みちきもらず。
大小だいせう遠近ゑんきんもなくほうけたり未生みしやうわれや斯くてありけむ
和歌でない歌 (旧字旧仮名) / 中島敦(著)
市日には遠近ゑんきんの村々より男女をいはず所持しよぢのちゞみに名所などころしるしたる紙簽かみふだをつけて市場に持より、そのしな買人かひてに見せて売買うりかひ直段ねだんさだまれば鑑符きつてをわたし、その日市はてゝかねふ。