道側みちばた)” の例文
思案を決めると紋太郎は道側みちばたの石へ腰をおろした。それから懐中ふところから煙管きせるを取り出し静かに煙草をふかし出した。
大鵬のゆくえ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それは道側みちばたに屋台を下していた売り歩く蕎麦屋の提灯に過ぎない事が解った。しかしどんな明かりでも、どんな人間の仲間でも、以上のような事に遇った後には、結構であった。
(新字新仮名) / 小泉八雲(著)
荷車が驚いて道側みちばた草中くさなかける。にわとり刮々くわっくわっ叫んであわてゝげる。小児こどもかたとらえ、女が眼をまるくして見送る。囂々ごうごう機関きかんる。弗々々ふっふっふっの如くらすガソリンの余煙よえん
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
百果報もゝがほうのあんで、みすゞりのあもの、心ある者や、御主おしゆ加那志がなし御為おだめ御万人おまんちよために、いのちうしやげらば、おややだによ、ひきはらうぢまでもおのそだてめしやいる、おほ事拝ごとをがで、高札たかふだしるち、道側みちばたに立てゝ
ユタの歴史的研究 (新字新仮名) / 伊波普猷(著)
沖田総司を尋ねて、ここまで来たお千代は、峠の道側みちばたの、草むらの中に立って、呆然ぼうぜんとしていた。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
袈裟けさかけた坊さんが畑の向うを通る。中日は村の路普請みちぶしん。遊び半分若者総出で、道側みちばたにさし出た木の枝を伐り払ったり、ちっとばかりの芝土を路の真中まんなかほうり出したり、路壊みちこわしか路普請か分からぬ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
お品や、お品の両親や、近所の人達が道側みちばたに立って、南の方を眺めていた。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)