途次みちすがら)” の例文
去年秋銃猟の途次みちすがら、渋茶を呑みに立寄って以来、婆や、うちは窮屈で為方しかたがねえ、と言っては、夜昼くつろぎに来るので、里の乳母のように心安くなった。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
はなしかの柳家なにがしらとお成道なりみちなる祇園ぎおん演芸場へ出演せしが席への途次みちすがら今年ことしの干支なる羊或は雪達磨の形せる狸に破れ傘あしらひたるなど、いとおほいなる雪人形をみいでたり。
滝野川貧寒 (新字旧仮名) / 正岡容(著)
修業中の小次郎法師が、諸国一見の途次みちすがら、相州三崎まわりをして、秋谷あきやの海岸を通った時の事である。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
途次みちすがらきこえた鬼門關きもんくわんぎようとして、不案内ふあんないみち踏迷ふみまよつて、やつ辿着たどりついたのが古廟こべうで、べろんとひたひ禿げた大王だいわうが、正面しやうめんくちくわつけてござる、うらたゞひと
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
わざと、使者差立さしたてるまでもない。ぢやが、大納言の卿に、将軍家よりの御進物ごしんもつ。よつて、九州へ帰国の諸侯が、途次みちすがらの使者兼帯、其の武士さむらいが、都鳥の宰領さいりょうとして、罷出まかりいでて、東海道をのぼつて行く。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)