すなわ)” の例文
然レドモ人トリ気ヲとうとビ、厳峻げんしゅんヲ以テ自ラはげまス。すこぶ偏窄へんさくニシテ少シク意ニ愜カザルヤすなわ咄咄とつとつトシテ慢罵まんばス。多ク人ノにくム所トナル。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
剣をあんじて右におもむきて曰く、諸君うらくはつとめよ、昔漢高かんこうは十たび戦って九たび敗れぬれどついに天下を有したり、今事を挙げてよりしきりかちを得たるに、小挫しょうざしてすなわち帰らば
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
象山儼然げんぜんとして曰く、「貴公は学問する積りか、言葉を習う積りか。もし学問する積りならば、弟子の礼をとりてきたれ」と。松陰すなわち帰りて衣服を改め、上下かみしもを着し、その門に入れり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
すなわチ一策ヲ進メ京紳ノ間ニ周旋ス。事すなわチ行ハレズ。他日石河鵜飼うがいノ諸氏遊説スルヤ別勅終ニくだル。アルイハコレニもとづクカ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
帝、孝孺の一族を収め、一人を収むるごとすなわち孝孺に示す。孝孺顧みず、すなわち之を殺す。孝孺の妻鄭氏ていし諸子しょしとは、皆経死けいしす。二女とらえられてわいを過ぐる時、あいともに橋より投じて死す。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
文壇の風潮たとへば客観的小説を芸術の上乗じょうじょうなるものとなせばとてひてこれに迎合げいごうする必要はなし。作者すなわちおのれのがらになきものを書かんとするなかれ。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
燕王手をって笑って、李九江りきゅうこう膏梁こうりょう豎子じゅしのみ、未だかつて兵に習い陣を見ず、すなわあたうるに五十万の衆を以てす、これ自らこれあなにするなり、と云えるもの、酷語といえども当らずんばあらず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
一夕藩吏突トシテ至リ、家君ヲ以テ去リ吉田城ニ押送シ妻児ヲ谷中やなかノ別邸ニ幽ス。両地音耗おんこう全ク絶ユ。時ニ弘ナオ幼ナリ。出デヽ羣児ぐんじト戯ル。すなわチ皆ののしツテ曰ク汝ノ父ハ賊ナリト。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)