ごう)” の例文
この人は近藤こんどうという僕の知合のものです。さっきも申上げた通り、柔道三段のごうのもので、こういう冒険が何よりも好きな男です。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
何しろ相手が内野君というごうの者ですからね。あなたにもいろいろ分からない事があるでしょう。だからあなただけにそっと知らせてあげますよ。
ニッケルの文鎮 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
しかしトラ十は無類のごうの者である。一、二度は、どうとともにたたきつけられたようになったが、すぐさま、やっと、かけ声もろとも、はね起きた。
爆薬の花籠 (新字新仮名) / 海野十三(著)
されど心ごうにして気韻高きさがなれば、はしたなく声を立てず、顛倒てんどうして座を乱さず、端然としていたまえり。
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
左兵衛佐のびんの毛が、川風にそそけ立っていた。赤穂の浪人のうちには、かなりごうの者がいると聞いている。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『万葉』がはるかに他集にぬきんでたるは論を待たず。その抽んでたる所以ゆえんは、他集の歌がごうも作者の感情を現し得ざるに反し、『万葉』の歌は善くこれを現したるにあり。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
いわゆる猥談わいだんは詰所のつきものでもあるし、近江之介はこのごうの者でもある。近江之介が嫌な顔を見せたのは、今の長岡の言葉が下品なひびきを持っていたからではない。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
落雲館の諸君子だ、年齢から云うとまだ芽生えだが、躁狂そうきょうの点においては一世をむなしゅうするに足る天晴あっぱれごうのものである。こう数え立てて見ると大抵のものは同類のようである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
沈湎ちんめんとして青じろいおもてに、どこか策士的なふうのある多田蔵人ただのくろうどと、北面の侍所にごうの者として聞えのある近藤右衛門尉との訪れは、この二人の組みあわせを考えただけでも、時節がら
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あなたの替玉かえだまを作るのですよ。影武者ですね、丁度持って来いの人物があるのです。相当の報酬を出して下されば、命をまとに引受けてもいいという男があるのです。柔道三段というごうのものですよ。
悪魔の紋章 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
律師則祐りっしそくゆうなどのごうの者が多く、九条から西八条一帯の民家へところきらわず火をかけたうえ、農家や牛飼町の車をあまた徴収して来て、車陣をきならべ、それをたてにジリジリつめよせたのち
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)