讃美歌さんびか)” の例文
もう一度彼はびくとも動かぬガンパウダーの横腹をたたきつけ、そして両眼をとじて、夢中になって、讃美歌さんびかをどなりだした。
英語の讃美歌さんびかの節を歌いながら庭を急ぐものがある。張り裂けるような大きな声を出して暗い樹蔭の方で叫ぶものがある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
女たちは讃美歌さんびかの本を持って、教会のほうへ行きました。ああ、いのれよ! 盛りあがる大波のかなたの墓場へさすらい行く人々のために祈れよ!
そのとき汽車のずうっとうしろの方からあの聞きなれた〔約二字分空白〕番の讃美歌さんびかのふしが聞えてきました。よほどの人数で合唱しているらしいのでした。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ニールスは、讃美歌さんびかの本をさがしだして、ひくい声で二つ三つ読みはじめました。ところが、読んでいるさいちゅうに、とつぜん、途中とちゅうでやめてしまいました。
或る日曜日、お前たちが讃美歌さんびかの練習をしている間、私はお前の兄たちと、その教会の隅っこに隠れながら、バットをめいめい手にして、その村の悪者どもを待伏せていた。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
やがて納棺のうかんして、葬式が始まった。調子はずれの讃美歌さんびかがあって、牧師ぼくし祈祷きとう説教せっきょうがあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
少しわきのほうには、讃美歌さんびか器用きようにこなす子供たちがならんでいて、そのなかの一人はいつもうたす前に、そっといろいろな声でうなるような真似まねをする——これをしょうして、調子ちょうしめるというのだ。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
平常へいじょうおんなのほうは、子供こどもらとオルガンにあわせて、讃美歌さんびかをうたい、また希望者きぼうしゃ英語えいごおしえたりしました。そして、青年せいねんのほうは、子供こどもらに、手工しゅこうのけいこをしたり、自由画じゆうがをかかせたりしました。
天女とお化け (新字新仮名) / 小川未明(著)
船の上からは、讃美歌さんびかが聞えてきました。クリスマスのよろこびをうたい、キリストによる人間の魂のすくいと、かぎりない命とをたたえる讃美歌です。
Oは耶蘇やそ信者であったから、寝棺には黒い布を掛け、青い十字架をつけ、その上に牡丹ぼたんの造花を載せ、棺の前で讃美歌さんびかが信徒側の人々によって歌われた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こうの青い森の中の三角標さんかくひょうはすっかり汽車の正面しょうめんに来ました。そのとき汽車のずうっとうしろの方から、あの聞きなれた三〇六番の讃美歌さんびかのふしが聞こえてきました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
するとお前は、或る時はお前の姉と、或る時はお前の小さな弟と、其処まで遊びに出てきた。いつだったかのように、遠くで花を摘んだり、お前の習ったばかりの讃美歌さんびかうたったりしながら。
麦藁帽子 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
讃美歌さんびかが信徒側の人々によって歌われた。正木未亡人は宗教に心を寄せるように成って、先生の奥さんと一緒に讃美歌の本を開けていた。先生は哥林多コリント後書の第五章の一節を読んだ。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
話をするものもあれば、うたうものもあり、ぶらぶらあるくものもあります。馬車が通ります。ろばがきます。チリンチリン、鈴をつけているのです。死人が讃美歌さんびかに送られておはかにはいります。
小さな女の子は、讃美歌さんびかを一つおぼえました。その中には、バラの花のこともうたってありました。そして、歌の中にバラの花のことが出てくるたびに、女の子は、自分の花のことを思い出しました。