調ちょう)” の例文
太公は、すぐ薬嚢やくのうをとりよせて、自身、煎薬せんやく調ちょうじてくれた。のみならず、幾日でもここで養生するように——ともいってくれる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
八大竜王と八字の漢語を用いたるところ「雨やめたまへ」と四三の調ちょうを用いたるところ皆この歌の勢を強めたるところにて候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「吉祥天女を思ひがけんとすれば、怯気おぢけづきて、くすしからんこそ佗しかりぬべけれ。」予はたおやかな原文の調ちょうが、いたずらに柔軟微温の文体に移されず
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
軽くいやして、わが渡す外套がいとうを受け取り、太くしわがれし声にて、今宮本ぬしの演説ありと言いぬ。耳をそばだつるまでもなく堂をもるるはかれのうるわしき声、沈める調ちょうなり。
おとずれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
この道さいわいにして年と共にあまねく世人の喜び迎ふる処となりしが、その調ちょうはその普及と共にようやく卑俗となり、こと天保てんぽう以降に及んでは全く軽口地口かるくちじぐちるいえらぶ処なきに至れり。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
これに加うるに中国一流の華麗豪壮な調ちょうと、哀婉あいえん切々の情、悲歌慷慨こうがいの辞句と、誇張幽幻な趣と、拍案はくあんたんの熱とを以て縷述るじゅつされてあるので
三国志:01 序 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
従ってこの新訳は、みだりに古語を近代化して、一般の読者に近づきやすくする通俗の書といわんよりも、むしろ現代の詩人が、古の調ちょうを今の節奏リトムに移し合せて、歌い出た新曲である。
『新訳源氏物語』初版の序 (新字新仮名) / 上田敏(著)
真淵が万葉にも善き調ちょうありあしき調ありといふことをいたく気にして繰り返し申し候は、世人が万葉中の佶屈きっくつなる歌を取りて「これだから万葉はだめだ」などと攻撃するを恐れたるかと相見え申候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
ここに一種清新幽雅の調ちょういださんと欲したるものなるべし。
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「それが、ちとむずかしい蘭薬らんやく調ちょうじ合せをいたしますため、薬名や何かも、自分でなければなりませぬので」
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)