訳合わけあい)” の例文
旧字:譯合
可哀かわいそうに! 普通なみの者なら、何ぼ何でも其様そんなにされちゃ、手をおろせた訳合わけあいのもんじゃございません、——ね、今日こんにち人情としましても。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
もとより往来しげ表通おもてどおりの事わけても雨もよひの折からとて唯両三日中には鑑札がさがりませうからとのみ如何いかなる訳合わけあいにや一向いっこう合点がてんが行き申さず。
雨瀟瀟 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「いや、元はと申しますとたあいもないことでござりまするが、起りは斯様かよう訳合わけあいでござりましてな……」
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
こわい事だ。当夜主人の頭のなかに起った以上の思想もそんな訳合わけあいさいわいにも諸君にご報道する事が出来るように相成ったのは吾輩のおおいに栄誉とするところである。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ほうお医者さんの崩れかい。それじゃその道で、おまんまは食べられるという訳合わけあいか」
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
京伝だの三馬だの一九だのという人々は即ち並行線的作者で、その思想も感情も趣味も当時の衆俗と殆ど同じなのであり、したがってその著作は実社会をそっくり写したような訳合わけあいになるのです。
下々の人情も天下の御政事も早い話が皆同じ訳合わけあいあきらめてしまえばそれで済むこと。あんまり大きな声で滅多めったな事をいいなさるな。口舌こうぜつ元来がんらい禍之基わざわいのもとい。壁にも耳のある世の中だ。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「どうのこうのと、はなせばなげ訳合わけあいだが、取早とりばやくいやァ、おいらァかね入用いりようなんだ」
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
「その縁故で今度また私が頼まれて、島田さんのためにあがったような訳合わけあいなんです」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
はッはッは、なにかとおもったら、いつもの馬鹿気ばかげたはにかみからか。ここへ堺屋さかいやんだのは、なにもおまえしでわせようの、二人ふたりはなしをさせようのと、そんな訳合わけあいじァありゃしない。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
私の心持があなた方に通じなくなるという訳合わけあいからです
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)