いっ)” の例文
と、この一廓ひとくるわの、徽章きしょうともいっつべく、峰のかざしにも似て、あたかも紅玉をちりばめて陽炎かげろうはくを置いたさまに真紅に咲静まったのは、一株の桃であった。
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
不図ふとした事で私が筆をとって、事の必要なる理由を論じて喋々喃々ちょうちょうなんなん数千言、んでくゝめるようにいって聞かせた跡で、間もなく天下の輿論よろんが一時に持上もちあがって来たから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「凡そ知ッているのよ、いって御覧なさい、怒りもなにもしないから。お可笑かしな位よ、」と言う主人の少女の顔は羞恥はずかしそうな笑のうちにも何となく不穏のところが見透かされた。
二少女 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
「早く言え、やるから。」と、きっぱいった。吉太は、声を震わしなが
不思議な鳥 (新字新仮名) / 小川未明(著)
「ですから御飯になさいなね、種々いろんな事をいって、お握飯むすびこしらえろって言いかねやしないんだわ。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
せきをしたといってはひそひそ、頭を痛がると言っては、ひそひそ。姑たちが額を集め、芝居や、活動によくある筋の、あの肺病だから家のためにはかえられない、という相談をするのです。
山吹 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)