見繕みつくろ)” の例文
本職でなくてもい。腫物できもののあるのや禿頭病とくとうびょう白雲しらくも田虫たむし湿瘡しっそう皮癬ひぜんなんてのを見繕みつくろって、かわり立ち代り坐り込ませる。これなら親類にいくらもあるだろう?
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
小さい薄縁うすべりを敷いてある火鉢の傍で、ここの賄所まかないじょから来る膳や、毎日毎日家から運んでくる重詰めや、時々は近所の肴屋さかなやからお銀が見繕みつくろって来たものなどで
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
第百四十 野菜入オムレツ 玉葱のいためたものを入れてもよし、赤茄子あかなすの皮をいて生のまま小さく切って入れてもよし。外の物を見繕みつくろって入れてもいいのです。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「これは、釘勘と言って、わしの友達だ。何か美味うまい物を見繕みつくろって、酒の支度をして来てくれ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
南夫婦と鏡子は菊屋の寿司を書斎へ運ばれて、子供達は六畳でそれを食べて、夕飯ゆふげはそれで済んだ。飯酒家のみての英也はお照の見繕みつくろつた二三品のさかなで茶の間で徳利を当てがはれて居た。
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
まことに氣の毒だが、なにか酒肴さけさかな見繕みつくろつて來てはくれまいか。
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
笹村と通りへ買物などに出かけると、お銀は翌朝の弁当の菜を、通りがかりの煮物屋などで見繕みつくろっていた。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
京橋辺にいる人がちょいと日本料理屋へ入って食事をすると向うの見繕みつくろいに任せて一人前二円位取られます。給仕の女に三十銭か五十銭も祝儀をると一度の食事に二円五十銭も取られます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
庸三も笑っていたが、あらためて平田青年をも紹介して、食べものの見繕みつくろいを頼んでから、風呂ふろへ入った。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
雷門で電車をおりて、仲見世なかみせの銀花堂で、下町好みの静枝に見舞ひのお返しになるやうなものを見繕みつくろつてゐると、知つた顔の半玉が二人傍へ寄つて来て声かけた。
のらもの (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
お作はただの一度も、自分の料簡りょうけんで買物をしたことがない。新吉は三度三度のおかずまでほとんど自分で見繕みつくろった。お作はただのろい機械のように引き廻されていた。
新世帯 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)