見免みのが)” の例文
もとより掏賊すりの用に供するために、自分の持物だった風変りな指環であるから、銀流を懸けろといって滝太が差出したのを、お兼は何条見免みのがすべき。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それを嫌う人は嫌うのだが、軽浮に堕ちない点を見免みのがしてはならぬのである。この石見から上来する時の歌は人麿としては晩年の作に属するものであろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
最後に両岸の地形は、見免みのがすことの出来ない要素である。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
猿のやうに目敏めざとい家光は、それを見免みのがさなかつた。
「葛木……更めてお目にかかります。……見苦しくなく支度をさせます。この女の内までお見免みのがしが願いたい。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いまだ諳記あんきしてものを云っているようなところのないのを鑑賞者は見免みのがしてはならぬだろう。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
行処ゆきどこもございません、仕様が無いんでございますから、先生さえ、お見免みのがし下さいますれば、わたくしの外聞や、そんな事は。世間体なんぞ。」となかば云ってが乾く。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あゝ、御番ごばんの衆、見苦しい、お目触めざわりに、成ります。……くくるなら、其の刀を。——何事もなさけ卿様だんなさま思召おぼしめし。……乱心ものゆゑ穏便おんびんに、許して、見免みのがしてつてたも。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とがせまい、罪にもせまい。わらわが心で見免みのがさうから、いかえ、柔順おとなしく御殿をや。あれを左へ突当つきあたつて、ずツと右へ廻つてお庭にや。お裏門の錠はまだ下りてはぬ。いかえ。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
あまり職掌を重んじて、苛酷かこくだ、思いりがなさすぎると、評判のわろいのに頓着とんじゃくなく、すべ一本でも見免みのがさない、アノ邪慳じゃけん非道なところが、ばかにおれは気に入ってる。まず八円の価値ねうちはあるな。
夜行巡査 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤ら顔は見免みのがさない。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)