いら)” の例文
……(耳を澄ます。沈黙サイレンス!)あれ、もうお返事がない! 声の聞こえないほど遠くへいらっしゃったの? いえいえ
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いつか僕のいる方を向て、「ナニ、おくさまがナ、えらい遠方へ旅にいらしッて、いつまでも帰らっしゃらないんだから、あいいッてよびによこしなすったよ」
忘れ形見 (新字新仮名) / 若松賤子(著)
「ハア、折角せつかくの日曜も姉さんのいらつしやらぬ教会で、長谷川の寝言など聞くのは馬鹿らしいから、今朝篠田さんを訪問したのです、——非常に憤慨ふんがいしてでしたよ」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
連れていらつしやい。十四の小僧ですが、空知太そらちぶとまでなら存じて居ます。案内位出来ませうよ。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
『オヤ野村さんぢやなくつて? マア何方どこいらつしやるの?』と女に呼掛けられた。
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
お嬢さんたったお一人で神奈川へいらっしゃるんでげすね、何うも変で、お嬢さん悪いことは申しません、わっしと一緒におけえりなせえまし、お供いたします、んなお急ぎの御用か知れませんが
「いゝえ、お嬢様、上野浅草へいらしやるのを、心配とも何とも思ひは致しませんが——帰途かへり大洞おほほら様の橋場の御別荘へ、お寄りなさるとおつしやるぢや御座いませんか」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
少年 お姉様が、私を棄てて遠い所へいらっしゃる日に、一度っきり私に教えたあのお歌よ!
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
『オヤ野村さんぢやなくつて? マア何方へいらつしやるの?』と女に呼掛けられた。
病院の窓 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
其の後姿仰ぎてありし老婆の声湿うるませつ「では、お嬢様、どうでもいらつしやるので御座いますか——斯様こんなこと申したらば、老人としより愚痴ぐちとお笑ひ遊ばすかも知れませぬが、何となく今日こんにちに限つて胸騒ぎが致しましてネ——」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)